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羽生結弦の五輪シーズン開幕。
SPでの世界新記録と悔し涙。 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byKiyoshi Sakamoto/AFLO

posted2017/09/26 11:30

羽生結弦の五輪シーズン開幕。SPでの世界新記録と悔し涙。<Number Web> photograph by Kiyoshi Sakamoto/AFLO

オータム・クラシックの表彰式前のリラックスした羽生の姿。照れ隠しの表情の奥に、本気の悔しさも滲む。

フリーで起こった、意外なミス。

 だがフリー『SEIMEI』では、意外な結果が待っていた。

 普段の4回転ループではなく、3ルッツから演技開始という構成。だがジャンプがパンクして1回転ルッツになってしまった。

 続いて3ループ、3フリップを跳び、スピンとステップシークエンスを経て、後半に。後半最初のジャンプ、4サルコウ+3トウループはきれいにきまったが、予定していた4トウループは2度とも2回転になり、最も安定している3アクセルで転倒。まったく羽生らしくない演技だった。

 フリー155.52と、彼の持っている自己ベストスコアより70ポイント近く低いスコアが出た。フリー5位、総合268.24でハビエル・フェルナンデスに続いて2位という結果に終わった。

 演技後、報道陣の前に現われた羽生は、こう口を開いた。

「ルッツが最初に抜けちゃって、そこから、まあ4ループが跳べるものなので、(次を4回転にするかどうか)一瞬考えたんですけど、やっぱりそういった一個一個の雑念がすごく多くて、本当にいろんなことを考えすぎてぐちゃぐちゃになっちゃったなと思います」

悔し涙を見せた羽生。

 語っているうちに、上に向けた目が涙でうるんでくる。この初戦は羽生にとって絶対に勝たなくてはいけない試合ではない。それでも、本来の実力とは程遠い演技だったことが、悔しくてならないのだろう。

「自分の心の整理のしかたとしては、本来の構成ではなかったかもしれないけれど、悔しさという大きな収穫を手に入れることができた。それプラスこの初戦の印象として、ショートの点数とか演技内容は、オリンピックで優勝するぞという印象としてはものすごく強いものがあったので、自分は強いんだというイメージを追いかけながら、さらに難しい構成で追いかけてやろうと思っています」

 言葉に出しているうちに心の整理がついてきたのか、表情も落ち着いてきた。

 やはり挑戦していくほうが楽しいのか、と聞かれると、「まあ、競技者なんでね」とくだけた口調になり、ちょっと照れたような笑顔を見せる。

「思うのは昨日のショートやって、(コーチなど)チームは全員そう思ったかはわかんないですけれど、お客さんは限りなくもう(ループではなく)サルコウでいいじゃん、って思うわけですよ」羽生がざっくばらんな口調でそう語ると、記者たちの間から笑い声がもれた。

【次ページ】 「挑戦しないとぼくらしい演技はできない」

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