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ダブルエースがパラ競泳を熱くする。
木村敬一と富田宇宙のライバル物語。

posted2017/09/24 07:00

 
ダブルエースがパラ競泳を熱くする。木村敬一と富田宇宙のライバル物語。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

北京大会からパラリンピックに出場し続けている木村。その経験値をベースに富田との戦いに挑む。

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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Asami Enomoto

 9月30日からメキシコで競泳の世界パラ選手権が行なわれる予定だったが、現地でおきた地震の影響で大会が延期となった。

 しかし現在の日本代表はベテランから若手まで多彩なメンバーがそろっており、注目すべき2人がいる。木村敬一と富田宇宙だ。

 S11クラス(全盲)の第一人者である木村には、1年前の苦い思いがある。日本競泳のエースとして臨んだリオデジャネイロパラリンピックだ。

 同大会では50m自由形で銀、100m平泳ぎでは銅、100mバタフライは銀、100m自由形で銅と、4つのメダルを獲得。エースにふさわしい結果を残した。

 だが、木村自身は納得が行かなかった。

「メダル4つより、金メダルが1個欲しかったです」

 金メダルだけを視野に入れていた。

3つのメダルを獲得したロンドン後、去就を迷ったが。

 木村は銀、銅の2つのメダルを獲得した前大会のロンドンのあと、競技生活を続行するかどうか迷っていた。続けられる環境があるのか見えなかったのが理由だった。その時期を、木村はこう端的に表現する。

「考えたくなかった」

 それでも、支援してくれる会社が見つかった。

「これで泳ぎ続けられる。続ける以上、目指すしかない」と誓ったのが金メダルだった。前年の世界選手権では平泳ぎとバタフライの100mで優勝している。金メダルは手の届くところにあった。

 だが大会では強烈なプレッシャー、体調不良に苦しめられた。心の弱さを感じた。

【次ページ】 「3年後の目標は?」「特にないです」の真意。

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