ドイツサッカーの裏の裏……って表だ!BACK NUMBER
宮市、宇佐美、内田、そして関根。
混沌のブンデス2部、4人の現状は?
posted2017/09/23 07:00
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph by
AFLO
異様な光景だった。ドイツサッカーのセカンドディビジョン、ツヴァイテ・リーガ第7節ホルシュタイン・キール対ザンクトパウリ(9月19日)のキックオフを控え、両チームの選手たちがウォーミングアップに汗を流していると、突如として“黒ずくめの集団”がピッチに雪崩れ込む。
30人くらいだろうか。顔をマスクで覆い隠すなど、揃いも揃って銀行強盗のような出で立ちをした男たちは、セキュリティーの制止を振り切りながらフィールドを縦断。向かった先はザンクトパウリのサポーターが陣取るスタンドで、彼らが掲げていたフラッグやバナーを取り外そうとしている。いったい何が起きているのか。試合開始を心待ちにするファンが呆気にとられたのは言うまでもない。
両軍にとって敗北が許されないローカルダービーを前に、蛮行に及んだのはホルシュタイン・キールのウルトラスだった。試合日の4日前にあたる9月15日にサポーターズグループの1人がザンクトパウリのファンと衝突し、その際に怪我を負わされたうえに応援旗まで奪われたことに対する怒りから、一連の報復措置に打って出たのだ。ほとんどの選手が口を閉ざす中で、ザンクトパウリのオラフ・ヤンセン監督が試合後に言葉を紡いだ。
「サッカースタジアムと縁のないような連中が、サッカーという舞台を利用してこうした行動に出るのは本当に残念なことだ」
選手やコーチが乱入したファンに介入した。
トップリーグに比べて警備のレベルが見劣りするツヴァイテリーガでは、残念ながらこうしたトラブルが稀に起こっている。その中で今回の騒動が大きな波紋を呼んでいるのは、選手やコーチたちが介入したからだった。
ザンクトパウリのGKコーチであるマティアス・ハインが侵入者の1人を捕まえてセキュリティーに引き渡せば、昨季までヘルタ・ベルリンで原口元気と同僚だったFWサミ・アラギは勇敢にもフラッグを取り返し、ザンクトパウリのサポーターから「偉大な行動だ」と大喝采を浴びた。とはいえ、その時に1人でも怪我を負っていれば、試合の中止・延期は避けられなかっただろう。