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豪州担当スカウトが見た大迫の価値。
「彼の1トップで日本は変わった」 

text by

田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byAsami Enomoto

posted2017/09/17 09:00

豪州担当スカウトが見た大迫の価値。「彼の1トップで日本は変わった」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

相手を背負ってボールを収める。シンプルだが日本人FWが最も不得手とする類のプレーを大迫は難なくこなしている。

数メートル、コンマ何秒か時間を作ってくれる。

――彼に代われるフォワードはいない?

「ひょっとしたら本田をもう一回トップで使ってくるかもしれない。大迫がやっていることは、相手のディフェンスラインを後ろにキープしてくれることです。今の代表を見渡したときに、同じことができるのは本田しかいない。ヴァイッドが使っている選手の中では本田が一番近いのかなと思います。岡崎には難しい。岡崎は、2トップのサテライトストライカーとしては素晴らしいですが」

――興梠慎三にもそういうプレーができるのでは?

「たしかにできる。でも使わない。単純に身体だけの問題かもしれません。Jリーグを見る限り、興梠は素晴らしいですから。

 また武藤が出場OKならば、武藤を右で使って久保を下げて、原口と武藤を左右にトップ下に香川を置く。あるいは香川と山口の二人をトップ下に並べるのも十分ありじゃないですか。武藤はオーストラリアも絶対に警戒すると思います」

――浅野や久保より武藤の方が怖い?

「オーストラリアがハイプレスをかけてきたら、浅野のスピードはたしかに有力な打開策です。ただオーストラリアも、決して速くはないが遅くもない。大迫や岡崎のスピードでは対処されるしスローインに逃げられる。そうなったときには浅野が一番ですが、武藤も面白い。これは感覚論ですが、武藤は止められないんじゃないか。浅野との違いは、武藤の方が相手を見て動いているので、ボールウォッチャーになった瞬間にクッと動きを変えて狙える。オーストラリアのディフェンダーはついていけないです。そこにパスを出せるパサーがいれば、攻撃がコンプリートするのですが」

――そういうパサーはいない。

「井手口がありかなと思っているのは、長谷部や山口に比べると、相手が嫌だなと思うボールを出せるからです」

――いずれにせよ大迫が鍵を握ることになる。

「彼がワントップに入って日本は変わった。彼がいることで、Z3のゾーンで選手たちが自由になった。このゾーンこそが、日本の一番の強みだから」

――今から20年以上前になるけど、ボラ(ミルティノビッチ)に同じことを言われた。日本はこのゾーンさえ押さえれば怖くはない。他ではどんなに自由にやらせても、ここだけ抑えれば怖くはないんだと。

「(ディフェンダーとの)戦いに負けないから、大迫は大した選手です。けっこう苦しいボールも抑えてくれるから。数メートルで全然違う。コンマ何秒か時間ができて、パスコースが見えますから。今までトライした選手たちにはそれが出来なかった。今は杉本健勇がどうかと言われてますけど」

――杉本も収めるタイプとは違う。

「ヴァイッドが求めているのとはちょっと違うような気がします。たしかに攻撃はいいです。でもイメージが湧かないんじゃないですか」

【次ページ】 代表メンバー発表後、率直な意見を聞くと……。

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