オリンピックへの道BACK NUMBER
バド奥原、レスリング文田の世界一。
最大のライバルが国内にいる好循環。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJMPA
posted2017/09/03 08:00
悲願の金メダルを手にした奥原。リオ五輪準々決勝では山口との日本人対決を制している。
強烈なライバル関係を生み出した、強化の成功。
そろって出場したリオでも準々決勝で対戦。奥原が勝利したが、山口が第1ゲームを先取する熱戦だった。
強烈なライバル関係を生み出したのは、強化の成功にほかならない。
グレコローマンの場合、強化委員長として責任を担ってきた西口茂樹氏を中心に、低迷の原因を追求した。日本以上に好成績を残していた韓国に学び、攻撃面と体力に問題があると考えた。他競技以上に豊富なナショナルチーム合宿などで克服に努めた。また、グレコローマンに熱心に取り組んできた育成指導者の存在もあって、選手が育ち、海外の選手にも通じる選手が複数現れてきた。
バドミントンも協会が主導して強化に取り組んできたことはよく知られているところだ。それが男子、女子、シングルス、ペアと各種目での複数の選手の台頭につながっている。今回の世界選手権の女子シングルスに、奥原、山口にとどまらず大堀彩、佐藤冴香と計4名が出場したことも、それを示している。
1人の突出した選手より、競争がある競技こそ伸びる。
1人の突出した選手が現れ、国際大会で活躍するケースはこれまでにもあった。それによって、その競技が脚光を浴びた。ただ、周囲にしのぎを削る選手、後に続く選手がいなかったために、その選手が退くとともにその競技の成績も下がり、関心が薄れて競技そのものがじり貧に陥る、そんなことはあった。
そういう意味でも、育成の努力によって活躍する選手が次々に出てきてライバル同士で競い合うことは大きい。「ナンバー2」(「ナンバー1」との位置はいつ替わってもおかしくはない存在)、さらにその地位に迫りひっくり返そうとする選手たちが続く状況が、競技の成績を向上させ、そして競技の先行きも開けていく。
文田、奥原らの活躍、そして彼らと張り合う選手がいる現在は、そう思わせる。