球体とリズムBACK NUMBER
オーストラリアは空中戦を卒業済み。
名監督が起こした「革命」の濃密さ。
posted2017/08/30 11:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
AFLO
ちょっと気が早すぎた。
僕の過去の記事を読んでくれた人がいるとしたら、少し前の言葉を訂正したい。
『ハリル「プレッシャーは大好きだ」監督業はマゾでなければ務まらない。』という一編で、「W杯は手を伸ばせば届きそうなところにある」と書いたが、実際はそんな耳あたりの優しいものじゃなかった。煽り抜きに、正真正銘のサバイバルになりそうな気配だ。
その要因の最たるものは、31日に埼玉スタジアムで対戦するオーストラリア代表の強さにある。
サンチェス、ビダルら擁するチリに互角以上の戦い。
6月にロシアで開催されたコンフェデレーションズカップで、サッカールーズ(Socceroos:オーストラリア代表の愛称。サッカーとカンガルーの複数形を掛け合わせた造語)はグループステージで敗退したが、その組を勝ち抜いたのはドイツとチリ。世界ランキング当時3位と4位のチームで、オーストラリア代表はドイツに2-3で敗れたものの、チリとは1-1の引き分けに終わった。そのチリとの3戦目は、彼らが勝てたとする見方もあるほどの接戦だった。
つまり今週木曜日に日本が対戦する相手は、世界大会で真のワールドクラスと互角に渡り合ったわけだ。アーセナルのアレクシス・サンチェス、バイエルンのアルトゥーロ・ビダルといった本物の猛者たちと。
オーストラリア代表指揮官、アンジェ・ポステコグルは彼の国のフットボールに「革命」を起こしている最中だ。彼自身が何度も口にしてきた「レボリューション」は、魅力的なスタイルの導入に始まり、それによってサッカー人口を増やし、最終的にはオーストラリアで一番人気のスポーツにするのが目標だという。
オーストラリア式フットボールやクリケット、ラグビーが根強く支持される国で、それが達成されれば、まさに革命となる。