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“本塁打の甲子園”はなぜ起きたか。
打球方向でわかるスイングのレベル。
posted2017/08/22 07:00
![“本塁打の甲子園”はなぜ起きたか。打球方向でわかるスイングのレベル。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/3/2/1500wm/img_32fad649d430c2c1ffafe27dc02cc6ec117343.jpg)
盛岡大付の植田拓。彼もまた、今大会の打高投低を象徴する打者の1人だった。
text by
![安倍昌彦](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
この夏の甲子園大会も準々決勝を終えて、選手たちが叩き出した本塁打も60本を超えた。
すでに大会記録を超えたアーチ合戦だが、単に多いというだけではない。今年の夏の甲子園の本塁打には、質の高さが感じられる。
“本塁打の質”とは何か?
打つべくして打った本塁打だったのか、どんなコースへ飛んだ本塁打だったのか、ということだ。質の高い本塁打には、必ずその理由がある。
投げてくるボールに大ヤマを張った、出会いがしらのホームランなら、誰にでも打てる。
そうした“まぐれ”の一弾は、ほとんどの場合、引っぱった打球になる。せーの! と、えいやー! で振り回した力任せのスイングから、バックスクリーンや逆方向への本塁打が生まれることはまずない。
しかし理由を持った本塁打には、タイミングとミートという確かな技術の裏づけがある。つまり、入るべくして入った本塁打なのだ。
「しまった……振り過ぎた……」
今大会の第1弾は、波佐見高(長崎)・内野裕太外野手(2年・175cm83kg・右投左打)が放ったものだ。
開会式直後の第1試合。この初弾の内容がすばらしかった。
強引に振り回した空振りを、振り終わりからもっと強引に振り戻して、その動きに内野選手の無念さがにじんでいた。
「しまった……振り過ぎた……」
これは修正してくるな、と思って見ていた次のボール。
早めにタイミングをとり始める。低目のちょっと沈んだように見えたボールを見事に芯で捉えると、そこから左腕でグイと押し込んだ。
二塁手の頭を越えて、右中間は破るな、と見ていたライナーがそのままぐんぐん伸びて、いちばん深いあたりのフェンスを越えてしまった。
タイミング、ミート、インサイドアウトのスイング軌道、そしてヘッドスピード。
本塁打の、すべての“理由”を持った一撃。