酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
激しい首位打者争いの意外な盲点。
打率を上げるには打数を減らせ?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/08/19 09:00
首位打者を取れば三冠王も視界に入る柳田。秋山との熾烈な争いを制することができるか。
安打記録を持つ秋山だが、首位打者になっていない。
どちらの年もイチローはシーズン終盤まで僅差の争いをしていたが、終盤にライバルにまとめ打ちされて敗退している。両年ともイチローはライバルよりも100打数前後多く、ライバルよりも打率が上がりにくかったのだ。
秋山は、NPB最多安打の記録保持者でありながら1度も首位打者になっていない。今回こそ初の首位打者をものにすることができるだろうか?
セの宮崎vs.坂本の争いでは「経験値」に差が。
セも面白い。こちらも秋山、柳田と同じ1988年生まれ、同級生の争いだ。
1位 宮崎敏郎(De)340打数115安打、打率.338
2位 坂本勇人(巨)399打数127安打、打率.318
数字だけを見ると、打率が上で、打数も少ない宮崎が有利だと思えるが、このケースはそうとも言い切れない。今季が5年目の宮崎は開幕戦は出場せず、3戦目に初出場したが代打だった。4月19日には二軍落ちも経験、レギュラーに定着したのは5月4日以降だ。それから三塁の定位置を確保して打率をぐんぐん上げてきたのだ。
ただ、これまで規定打席に到達したことはなく、通算安打数は258安打にとどまっている。一方の坂本は同級生ながら、すでに通算1528安打、ベストナイン3回、そして昨年は首位打者に輝くなど、大選手への道を歩み始めている。
両者の経験値の差は大きく、終盤になるとこの差がモノを言うのではないか。坂本が2年連続首位打者に輝く可能性はかなり高いだろう。ただ坂本を振り切って、宮崎が首位打者になれば、大いに自信になることは間違いない。
両リーグの首位打者争い、接戦を期待したい。ただ打率をキープするために「出場しない」作戦をとるのはやめてもらいたい。興ざめだし“出来レース”のそしりをまぬかれない。最後まで正々堂々とバットで勝負して、決着をつけてほしいものだ。