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激しい首位打者争いの意外な盲点。
打率を上げるには打数を減らせ? 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2017/08/19 09:00

激しい首位打者争いの意外な盲点。打率を上げるには打数を減らせ?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

首位打者を取れば三冠王も視界に入る柳田。秋山との熾烈な争いを制することができるか。

同率首位は2度あるが、最後は「出場しない」作戦。

 僅少差の1位、2位はいずれも張本、落合というパを代表する打者がセに移籍して、セの強打者との競り合いに僅差で敗れたというもの。3位のロッテ、平井は規定打席403ぴったりで松永をかわして首位打者に輝いた。ちなみに松永は3割を7回も打ちながら、ついに首位打者は取れなかった。

「いやいや、もっと僅差というか、NPBには同率首位打者が2組出ているだろ」というご指摘もあろう。確かに、NPBには打率.333での同率首位が2回ある。

<1969年 パ・リーグ>
1位 永淵洋三(近) 486打数162安打 打率.333
1位 張本 勲(東) 480打数160安打 打率.333

<1987年 セ・リーグ>
1位 正田耕三(広) 393打数131安打 打率.333
1位 篠塚利夫(巨) 429打数143安打 打率.333

 しかし2つのケースはいずれも、打率が.333で並んで以降、両打者ともに打席に立っていない。2人がタイトルを分け合えるようにチーム、監督が配慮したのだ。打率争いにはこの手の「出場しない」という興ざめな作戦があるのだ。

谷沢が張本を最後に交わした1976年が最高の闘い。

 それを踏まえればNPB史上最高のバットマンレースは、1976年セ・リーグ、谷沢健一と張本勲の争いだろう。

 1976年10月7日の時点で張本は.358で1位、谷沢は.339と2分近い大差で3位だった(2位は.349のヤクルト・若松勉)。江藤愼一(中日・ロッテ)に次ぐ史上2例目の、張本のセ・パ両リーグでの首位打者は決定かと思わせたが、ここから谷沢が猛追する。

 張本は10月16日に.355でシーズンを終えたが、谷沢はこの時点では.352、翌日の広島とのダブルヘッダーで合わせて6打数2安打と打率を上げることができなかったが、10月18日の広島戦、3打席目まで3打数2安打、.354まで肉薄、最後の打席で高橋里志から見事に中前打を放って、わずか6糸差、史上最少差で張本を抜いた。10月7日からこの日まで、谷沢は36打数20安打という猛追だった。

 当時は巨人戦しか実況中継がなかったが、この年始まった「プロ野球ニュース」で、谷沢の快挙が報じられた。中日ファンの父親が大喜びしていたのを思い出す。なお谷沢と張本の首位打者争いは、1厘以内の競り合いでは最高打率でもあった。

【次ページ】 安打1本の比率が大きい、打数が少ない打者が有利。

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