Jをめぐる冒険BACK NUMBER
関根貴大、敬愛する原口元気に続く。
ドイツでも走り、仕掛け、決めろ!
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byURAWA REDS
posted2017/08/10 08:00
浦和サポーターにも絶大な人気を誇った関根貴大。ハードワークと個人での突破を両立できるウイングバックは欧州でも貴重だ。
「そんなに強いチームには行けない」からこそ。
得たのは刺激だけではない。ヨーロッパでプレーすることの難しさを、改めて感じ取っている。
「元気くんはあんなに頑張って守備をして、ハードワークして、何度も裏を狙っているのに、ボールが出てくるのは数えるほどだし、出てくるボールも厳しいものばかり。浦和の場合は周りに上手い選手が多いから、自分が裏を狙えばボールが出てくる。そう考えると、元気くんの凄さが分かる。自分がもしドイツに行けたとしても、そんなに強いチームには行けないと思うから、そういう中でどれだけもがいてやれるか……」
このとき口にした「そんなに強いチームには行けない」というくだりは暗示的で、この頃から自分が何をすべきか、しっかり見据えていたことが分かる。
5ゴール10アシスト――。
ドイツへの想いを膨らませて帰国した関根が、今季の目標として掲げた数字がこれだ。
「ゴールとアシストをもっと増やす。あと、これまで以上に走ることを意識したい。もっと怖さを見せないと、って思うんです」
覚悟のほどは、プレーから滲み出ていた。右サイドからカットインして味方にボールを預けると、人垣をかき分けるようにして裏に飛び出し、リターンをもらう。サイドに流れたシャドーの選手と入れ替わって中央のスペースに潜り込み、シュートを放つ。
シーズンの半分を終えた時点でACLを含め公式戦5ゴール8アシストをマーク。しかも、この成績をFWでも、攻撃的MFでも、ウイングでもなく、守備の負担も強いウイングバックとして出場しながら実現してみせたのだ。目標はいつしか5ゴールから10ゴールへと上方修正された。
月間ベストゴールに選ばれた5人抜きドリブル。
なかでも大きな意味を持つのが、7月の月間ベストゴールに選ばれたサンフレッチェ広島戦でのゴールだろう。
リーグ戦3連敗で迎えたこの試合で、浦和は2点を先行しながら逆転を許す。だが、85分に関根のスルーパスをズラタンが決め、3-3で迎えたアディショナルタイム。センターライン付近からドリブルをスタートした関根は、柴崎晃誠と清水航平の間をすり抜けると、さらにスピードアップする。野上結貴のスライディングをかわし、千葉和彦と水本裕貴を抜き去り、ゴールエリアに右サイドから切り込んでいく。
「GKが少し寄っていたのが見えたので、そこしかないなって」
右足で渾身のシュートを放つと、ボールはGKとニアポストのわずかな隙間を抜け、逆サイドのゴールネットに突き刺さったのだ。