話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
強いチームには必ず“重石”が。
柏を支える細貝萌&大谷秀和の2人。
posted2017/08/11 08:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
黄色く染まったサポーターの前、柏レイソルの選手たちが歓喜の声を上げている。
約1カ月ちょっと、4試合ぶりの勝利で3位に浮上。しかも年俸6億円のポドルスキら豪華補強をしたヴィッセル神戸を破っての勝ち点3は、優勝争いに踏みとどまり、新たに勢いに乗る意味でも非常に大きかった。
試合後、サポーターの前にスタメン、サブの選手全員が出て、日立の旗やのぼりをわっしょいわっしょいと掲げた。神戸戦は「Hitachi Day」だったからだが、その中には細貝萌もおり、チームメイトと一緒に笑顔で日立の旗を持っていた。
「今の柏はベテラン、特にハジ(細貝萌)さんの存在が大きいですね」
手塚康平ら若い選手からそんな話を聞いたのは、柏が連勝している時だった。
中谷進之介、中山雄太、中村航輔ら20~22歳の若い選手たちが躍動し、勝ち続けている中、レギュラーではない細貝の存在が大きいというのだ。
ボランチのスタメンになると思っていたが……。
細貝は今年3月、ドイツのシュツットガルトから完全移籍で柏レイソルに入団した。
前チームでは怪我などがあって出番を失い、存在感を示すことができなくなった。そのため移籍を決断し、自分自身の再生と「若い選手の見本になり、いい影響を与えたい」と何かしらの“遺産”を残すために若手が多い柏を選択した。
ドイツから帰国した時はすでにJリーグのシーズンが始まっていたが、おそらくはボランチですぐにプレーできると思ったはずだ。だが、リーグ戦では20節の神戸戦までスタメン出場がなく、今は試合をキッチリ終わらせるクローザーの役割を果たしている。ドイツで6年間もプレーしていればプライドもあり、「なぜ」と思うこともあるだろうが、細貝自身は「ドイツでもこういう経験(サブ)をしているので難しくはない。自分はまったくブレることなく、自分のできることをやってチームに貢献するだけです」と、不満気な表情をいっさい見せない。