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ボルト不安説と新鋭の台頭、日本勢。
世界陸上100mは世紀のレースに!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKyodo News
posted2017/08/04 06:30
サニブラウンや多田、ケンブリッジと個人でも期待が高まるメンバーがそろった。ボルトとともに大一番のスタートラインに立つ選手は出るか。
ボルトを止めるとすれば、ガトリンら米国勢か。
このボルトのタイムは、オリンピック、世界選手権を前にした段階としては、過去10シーズンで最も遅い。たしかに前哨戦となったダイヤモンド・リーグでは、身体がフィットしている感じがなく、スタートも緩慢な動作が目立った。
それでも、ロンドンでの会見でボルトらしい「ビッグマウス」ぶりが発揮されたということは、かなり状態が上向いてきたと見るべきだろう。
ライバルたちにとっても、今回が「ウサイン・ボルトを倒す最後のチャンス」ということになり、期するものは大きい。ボルトを止めるとするならば、やはりアメリカ勢ということになるだろう。
日本ではガトリンの知名度が高いが、全米選手権で今季自己最高となる9秒95をマークし、ボルトから称賛を受けたほど。これまでの世界選手権では、先行しても最後はボルトに抜かれる「引き立て役」に甘んじてきたが、果たして100mを淀みなく走り切ることが出来るだろうか。ガトリンは、ボルト相手だとラスト20mを切ってから力むクセがどうしても抜けない。
175cmの小柄なスプリンター、コールマンは前半型。
そしてもうひとり、売り出し中の若手が今季世界最高をマークしているコールマンだ。
コールマンは身長175cmとアメリカのスプリンターとしては小柄だが、スタートに関してならガトリン以上の爆発力がある。スタートで飛び出し逃げ切るのがレースパターンだが、後半型のボルトとの対決が楽しみだ。ただし、国際経験が少なく、果たしてラスト20mをきっちりクロージングできるかという点については、ガトリン同様に疑問符がつく。
アメリカのふたりに加え、ボルトにとって同胞のブレイクも絡み、役者が揃った「世紀のレース」になる可能性は高い。