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部井久アダム勇樹の大いなる一歩。
ハンドボール界に現れた18歳の天才。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2017/08/02 08:00
史上初の高校生での代表デビューを果たした部井久アダムは194センチ90キロの堂々たる体格。ここから3年でどれほど成長するのだろうか。
代表復帰した宮崎大輔も部井久を頼もしく感じている。
チーム最年長のベテランも、今回の日韓戦をレベルアップのモチベーションとする。'15年11月以来の代表復帰を果たした宮崎大輔だ。
コートの内外で日本ハンドボール界のアイコンとなってきた男は、若いチームメイトに頼もしさを感じている。「勝てなかったけれど、大きいゲームです」と切り出した。
「劣勢のゲーム展開になってくると、誰がシュートを打つんだってなるんです。でも、今日はみんな自分で狙っていたでしょう。それはすごく良かったと思いますね」
ゴールへの意欲を見せたチームメイトには、部井久も含まれている。18歳の高校生と36歳の自分を比較して、宮崎は「ダブルスコアですから」と笑う。
「初めての日本代表の試合ですから、すごい緊張したと思うんです。でも、試合前にコートへ入ってボール回しをしたら、戦う眼をしていた。高校生ですけれど強い気持ちを持っていて、『もうちょっとこういうパスを下さい』とか言ってきますし。そういう姿勢がすごく力強い。果敢にシュートを狙ってますしね。今日の彼は良い悪いという評価をする以前に、しっかりとプレーしていたと思います」
部井久の存在は、刺激になっているのか。国際経験豊富な宮崎は、「もちろんですよ」と即答した。
「年齢はダブルスコアでも練習中はライバルなので、自分のなかでは負けられない気持ちでやっています。まだ若い選手ですから改善できる点はあると思うので、これから練習で色々と教えていきたいと思います」
高校卒業後は、ヨーロッパでのプレーを視野に入れて。
今年1月に行なわれた世界選手権で、日本は出場24カ国中22位に終わった。世界ランキングは22位である。1988年以来の出場となる東京五輪で世界を驚かせるには、数多くのハードルを越えていかなければならない。
いまはまだ、世界のトップオブトップを仰ぎ見る立場である。だからこそ、このチームの伸びしろに期待したくもなる。
ヨーロッパのクラブで研鑽を積む海外組がいて、1月の世界選手権に大学生で出場した玉川裕康や徳田新之介のような選手もいる。選手としても指導者としても実績豊富なシグルドソン監督のもとで、日本がライバルを上回る成長曲線を描いていくことは不可能ではないはずだ。
今夏はインターハイと世界ユース選手権に出場する部井久は、高校卒業とともにヨーロッパのクラブでプレーするプランを描く。「向こうでプレーしてもっともっとレベルアップして、東京五輪を迎えたい」と瞳を輝かせる。18歳の夢もまた、日本代表の可能性を拡げていく。