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部井久アダム勇樹の大いなる一歩。
ハンドボール界に現れた18歳の天才。
posted2017/08/02 08:00
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
AFLO
2020年の東京五輪を射程とする若きハンドボーラーが、力強い一歩を踏み出した。
7月29日に行なわれたハンドボールの日韓定期戦で、18歳の部井久アダム勇樹が日本代表デビューを飾ったのだ。
部井久は「べいぐ」と読む。博多高校3年の彼は、パキスタン人を父に持つ。背番号15のユニフォームの背中には、「BAIG」の文字があった。
ハンドボール日本代表は、'17年2月からダグル・シグルドソン監督のもとで強化を進めている。元アイスランド代表で日本リーグでもプレーしたこの44歳は、ドイツのクラブチームや代表チームで指導者として結果を残してきた。'15年に世界最優秀監督を受賞し、昨夏のリオ五輪ではドイツ代表を銅メダルへ導いている。
韓国に9-11とリードされた前半22分、世界的名将と言っていい指揮官が動く。日本の攻撃の局面で、部井久がコートに送り出されたのだ。
「年代別の代表では国際試合も経験させてもらっているのですが、今日みたいにお客さんがたくさん入っているなかでプレーするのは初めてでした。まあでも、そこまであがることもなく、そこまで緊張することもなかったです」
最初のプレーでシュートを放つも、得点ならず。
日韓戦へ向けたトレーニングでは、主力メンバーに混じってプレーしていた。シグルドソン監督からは、「成長しているぞ」と声をかけてもらっていた。コートに立つことを予感できていたから、緊張の糸に身体が縛られることはない。194センチの長身が、のびやかに躍動する。
最初の登場シーンで、自らシュートを放った。攻守が入れ替わるとベンチへ戻るが、次の攻撃の局面でも部井久はコートに立つ。チーム最年少の18歳は、自らのシュートで韓国のゴールを襲った。
「最初のシュートはあれだったんですけど、次はいつもだったら決めているポイントだったんですが、ちょっと慌てちゃって……」
その後も攻撃の局面で投入されるが、シュートへ持ち込むことはなかった。チームは後半のラストプレーで同点とし、シグルドソン監督の初陣はドローで幕を閉じる。