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部井久アダム勇樹の大いなる一歩。
ハンドボール界に現れた18歳の天才。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2017/08/02 08:00
史上初の高校生での代表デビューを果たした部井久アダムは194センチ90キロの堂々たる体格。ここから3年でどれほど成長するのだろうか。
13勝40敗の韓国に引き分けたのは前進だが……。
試合後の部井久は、ふたつの表情を浮かべた。過去の対戦成績で13勝2分40敗の韓国に負けなかったことを前向きにとらえつつ、自らのプレーを厳しく見つめていた。
「目標としては1点でもいいから点を取りたいというのがあったので、得点できなかったのが悔しいですね。惜しいじゃダメなんで、決めないと。自分としては悔いが残るというか、悔しいですね」
記者とのやり取りを重ねていくうちに、部井久の胸中で悔しさが膨らんでいく。
歯がゆさや物足りなさもプラスした、ストレートな感情が溢れ出てくる。
「なかなかチャンスも少なかったんですけど、少ないチャンスを決め切る力は必要だと感じました。たとえばの話ですけれど、あそこで自分が決めていれば今日の試合は勝っていたので。そういうふうにあとから後悔しなくていいように、少ないチャンスでも決め切れるようにならないといけないです」
記者が入れ替わり、同じような質問を浴びる。そのたびに、部井久は自らを責める。
「超悔しいです。もう一回やり直したいくらい悔しい。デビュー戦はホロ苦というか……もっとやれるところを見てもらいたかったですし、2本目のシュートはすごいチャンスだった。あの1本にかける集中力を持たないと。チャンスは与えてもらうだけじゃなく、自分で作らないといけない。自分でチャンスを作る意味でも、あれは決めなきゃいけないし、決められたと思います」
この日の経験が、部井久のモチベーションになる。
胸を熱くするのは、悔しさばかりではない。日本代表の一員としてプレーした初めての経験は、部井久の心に太い芯を通した。
「今日の試合はこれからの自分のモチベーションにつながると思います。もっと努力しないといけないことだらけなので、個人としては悔しい結果だったので、それをモチベーションに頑張ろうと思います。こういう大きな舞台でももっともっと自分らしさを出していけば、やっていけるんじゃないかなと感じることもできましたし。いい意味での危機感というか、もっと成長しないと東京五輪で活躍する目標は達成できない。これから3年間、しっかり充実した時間を過ごしていきます」