酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
甲子園優勝投手はプロでどうなる?
のべ187人中、100勝は8人だけ……。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/08/04 17:00
プロ入り後しばらく苦しんだソフトバンク・東浜巨だが、今年はついにエースの風格をまといはじめた。
甲子園優勝延べ187人のうち、プロ100勝は8人だけ。
今度は逆に、甲子園の優勝投手の実績を見ていこう。甲子園優勝投手のプロ野球での勝利数10傑は以下の通りだ。
1.野口二郎 237勝(中京商)
2.平松政次 201勝(岡山東商)
3.真田重蔵 178勝(海草中)
4.桑田真澄 173勝(PL学園)
5.松坂大輔 108勝(横浜)
6.尾崎行雄 107勝(浪商)
7.池永正明 103勝(下関商)
8.野村弘樹 101勝(PL学園)
9.田中将大 99勝(駒大苫小牧)
10.中山俊丈 83勝(中京商)
甲子園の優勝投手はこの春まで延べ187人いるが、プロ野球で100勝を挙げたのは8人しかいない。
また優勝投手の中には前述の王貞治、柴田勲に加え、古くは巨人の水原茂(高松商)、中島治康(松本商)、阪神の藤村富美男(呉港中)、最近では広島の西田真二(PL学園)、ロッテ・中日の愛甲猛(横浜)、近鉄・中日・西武の金村義明(報徳学園)のように、投手を断念して野手に転じる選手も多い。
優勝投手の前途は決して順風満帆ではないのだ。
ちなみにゴルフのジャンボ尾崎も徳島海南高校時代、春のセンバツの優勝投手になっている。
現役にも、甲子園優勝投手は10人以上。
プロ野球のスカウトは、逸材投手を見つけると「適当なところで負けてくれ」と祈るという。甲子園の過酷なマウンドで心身を消耗させたり、怪我をされては困るからだ。
またMLBでは、日本人投手を獲得するときにメディカルチェックをしているが、ほとんどの投手が肘や肩に障害が見つかるという。10代の甲子園での酷使が、体に痕跡を刻んでいる可能性はあるだろう。
甲子園の優勝投手は箔がつくが、代償も大きいのだ。
現役には松坂大輔以外に、ヤクルト・近藤一樹(日大三)、ロッテ・大谷智久(報徳学園)、巨人・西村健太朗(広陵)、広島・福井優也(済美)、日本ハム・斎藤佑樹(早稲田実)、DeNA・田中健二朗(常葉菊川)、ソフトバンク・東浜巨(沖縄尚学)、島袋洋奨(興南)、広島・今村猛(清峰)、阪神・藤浪晋太郎(大阪桐蔭)、ヤクルト・高橋奎二(竜谷大平安)、西武・高橋光成(前橋育英)、日本ハム・平沼翔太(敦賀気比)、中日・小笠原慎之介(東海大相模)、西武、今井達也(作新学院)と、甲子園の優勝投手がひしめいている。
※他に独立リーグ愛媛マンダリンパイレーツで正田樹(桐生第一)が現役続行中。
彼らは甲子園で栄冠をつかんだ経験を、プロで活かしていくことができるだろうか?