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本田が去ったミランの274億円補強。
バイエルンに4-0もファンは不安?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/07/27 07:00
王者ユベントスでリーグ5連覇、CL準優勝に貢献したボヌッチまで獲得したミラン。カカらのいた黄金時代再建となるか。
「仕上げのチェリー」はベロッティかオーバメヤンか。
“チャイニーズ・ミラン”の経営を仕切るファッソーネCEOは、ここまでの移籍市場の成果に笑みをこぼす。
21日付の伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』インタビューで、一度は初夏に破談した守護神ドンナルンマとの契約延長再交渉をまとめ上げた部下のSDミラベッリの手腕を讃えつつ、クラブの中期展望を意気揚々と語った。
「今夏の移籍市場は、計画以上の上出来だといえる。各々の移籍金額は適正価格で馬鹿げた投資ではない。2022年までにクラブの総売上額を現在の倍にすること、それから世界の5本の指のクラブに入ることが我々の目標だ」
驚くべきは、ファッソーネとミラベッリに未だ補強の手を緩めるつもりがないことだ。
「(ケーキのてっぺんに飾る)仕上げのチェリーがまだ残っているじゃないか」
標的は昨季自己最多26ゴールを上げたイタリア代表FWベロッティ(トリノ)か、ブンデスリーガ得点王のFWオーバメヤン(ドルトムント)とされている。いずれにせよ、“とどめの大玉花火”といえる大物ストライカー獲得をもって、ミランの新チームは完成する。
ミラニスタは歓迎、でも一般ファンは「危険すぎる」。
『ガゼッタ』紙は、7月下旬にミランの超大型補強の是非を問うアンケートを行った。ミラニスタたちこそ「大量の資金投下は正しい」という声を多く寄せたが、一般のファン含む集計で最多37%を集めたのは「これは危険すぎるギャンブルだ」という危惧だった。
不安視されるのも無理はない。
国際監査法人デロイト社による報告書「フットボール・マネー・リーグ」によれば、ミランの2015--2016年シーズンの売上総額は2億1470万ユーロだった。
ファッソーネCEOとミラベッリSDは、1年の総売上に匹敵する額をたった2カ月で使った計算になる。
欧州で最も多額の資金を投資したのだから、李会長以下新経営陣は即優勝という結果を求めそうなものだが、今季のミランにとってスクデット獲得へのプライオリティはそこまで高くない。
彼らが本気で狙うべきは、4位以上に与えられる来季CL出場権とそれに伴う売上額アップであり、さらにいえば2018-2019年シーズンに計画する香港か深センの株式市場への上場に向けた足固めこそ、クラブとしての至上命題だ。