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井口資仁の名はシカゴで永遠に残る。
反骨の逆転ホームランと、世界一。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2017/07/02 07:00
2005年、シカゴを沸かせた井口も42歳となった。NPB現役最年長野手として、千葉ロッテでラストシーズンを戦っている。
スモール・ベースボールは当時懐疑的に見られていた。
その試合のことは、よく覚えている。
レッドソックスは2003年のア・リーグ優勝決定戦の最後の最後にひどい負け方をしたにも関わらず、2004年に奇跡のような勝ち上がり方で86年ぶりのワールドシリーズ優勝を成し遂げ、「バンビーノの呪い」を打ち破った。
地元ボストンをはじめ、「野球メディアの中心」を自負する東海岸のメディアの多くは、その不確かで甘い余韻から抜け出せないまま、2005年も「連覇の可能性は高い」と見ていた。ギーエン監督が盗塁やエンドラン、バントを用いる、いわゆる「スモール・ベースボール」=「昔の野球」を具現化したことが話題となったのは、その翌年のことである。当時はまだ、こんな暗雲がホワイトソックスの頭上に浮かんでいた。
「いくら盗塁をしようが、エンドランに成功しようが、ここはメジャーリーグだ。結局はマネーボール流で、塁から塁へとひとつずつ進んでいく野球か、豪快で大味なイケイケどんどんの野球に敗れるだろう」
「健闘もここまでか」という雰囲気になっていたが。
それなりの根拠もあった。ホワイトソックスはその年、公式戦で最大時には15ゲームもあった2位インディアンスとの差が、残り8試合となった時点では1.5ゲーム差にまで縮まっていたのだ。
結局はシーズン最後の直接対決3連戦に3連勝して6ゲーム差で逃げ切ったのだが、ア・リーグ地区シリーズで前年の覇者レッドソックスと対戦すると決まり、心のどこかで「健闘もここまでか」という雰囲気になっていたのだ。
ところが――。
10月4日にシカゴのUSセルラー・フィールドで行われた初戦、ホワイトソックス打線はレッドソックス投手陣を攻略して14-2で圧勝してしまった。レッドソックスは第2戦の先発にベテラン左腕のウェルズを立てた。ヤンキース時代の1998年に完全試合を達成するなど、巨漢に似合わず制球力で勝負する投手だった。