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中村充孝だけを90分間見つめてみた。
新生鹿島を象徴する元やんちゃ坊主。 

text by

松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

PROFILE

photograph byKashima Antlers

posted2017/06/27 11:35

中村充孝だけを90分間見つめてみた。新生鹿島を象徴する元やんちゃ坊主。<Number Web> photograph by Kashima Antlers

中村充孝は豊かなアイディアと卓越したボールスキルを持ち、中央でもサイドでも機能する、見ていて楽しい選手なのだ。

「こいつならボールを預けても大丈夫」な選手に。

 中村も、日頃の練習からコツコツと評価を高めてきた1人だ。

「剛さんがコーチだった頃から、『パスを出したら動け。守備になったら走れ』って言われ続けてきたんです。真ん中に行ったり、右に行ったりして、スペースがなくてもブラジル人選手からパスが出てくるのは、これまでの2戦で信頼関係ができたから。やっぱり彼らにアシストできたのが大きいと思います。『こいつならボールを預けても大丈夫だ』と信頼してもらえるようになった。彼らはハングリーですから。

 俺が今目指しているのは、テレビ中継で常に画面に映っているような選手。ピッチのいたるところに顔を出したい。そのためにも、もっとゴール前に入っていかないとダメですね。でも、こういうプレーを目指してやっていると、どれだけ疲れていても、走れるんですよ」

元やんちゃ坊主は、チームを第一に考える天才になった。

 久しぶりに会った彼は、とても大人になっていた。初めて話したのは、京都サンガF.C.に所属していた2010年。当時、20歳の彼はこう語っていた。

「日本代表の選手にも、技術で劣るとは思ってないっすよ」

「周りに1mのスペースがあれば、なんでもできますよ。だから俺にパスを出してほしい」

 やんちゃで、ビッグマウスで、誰よりもボールの扱いが上手だった男は、家庭を持ち、鹿島でなかなか試合に出られない経験を経て、チームのことを第一に考えられる天才になりつつある。

「今シーズンが始まる前に、自分に足りないものをとにかく身につける1年にしようって決めたんです。今はね、チームが勝ったときに心の底から嬉しいんです。これまではチームが勝っても、自分が活躍していないと、嬉しいけど、なんか引っかかる感じだったんですけどね」

 大人になったねぇ。思わず口にすると、26歳になった“元やんちゃ坊主”は、照れ臭そうに笑った。

「いや、せっかく来てもらったのに、今日は点にも絡めんかったから。次は絶対やるから、また来てくださいね」

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