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オシムは“監督”ジダンをどう評価?
CL決勝からサッカーの未来を考える。
posted2017/06/17 07:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
レアル・マドリーがチャンピオンズカップ時代からの最多優勝記録を12回(ちなみに第2位はACミランの7回)に更新し、ユベントスが同じく決勝最多敗戦記録を7回(第2位はバイエルンとベンフィカの5回)に更新した今年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝。
イビチャ・オシムが、このスペインとイタリアの名門対決をどう見たのだろうか気になっていた。
久々の電話での対話となったため、掘り下げた議論こそできなかったものの、彼の口をついて出てくるのは、試合やピッチ上のプレーに留まらない、世界のサッカーをより広く大きく捉えた珠玉の言葉の数々であった。
サッカーの現状と未来を彼はどう考えているのか――相変わらず健在なオシム節をお届けする。
決勝戦は間違いなく“スペクタクル”だった。
――ユベントス対レアル・マドリーをどう見ましたか?
「ああ、決勝に相応しい試合、決勝に進んだふたつのチームに相応しい試合だった。多くの人々はこの試合にもっと多くを期待していて、ちょっとガッカリしたかもしれないがね。しかしユベントスも、モナコやバルセロナのようなチームを相手に、常に最高の試合ができるわけではない。そこまでは望み過ぎだ。
サッカー的な観点からすると……データが好きで、ディシプリンがあり、テクニックやコレクティブに優れたチームが好きな人々にはちょっと不満な試合だったのかもしれないが、そう言いきってしまうのは厳しすぎる。ユベントスにとっては、たしかに難しい試合ではあったが」
――そうですが、前半のユベントスはとてもよくて、むしろレアル・マドリーを上回っている時間帯もあったようですが。
「レアルのような優れたチームには、時間もスペースも一瞬たりとも与えてはならない。ああいった強大な攻撃力をどうすれば無力化できるか……そこにとにかく腐心することでこれまでのサッカーは大きく進歩していったわけだから。
効率の良さや両チームの選手たちのディシプリンなど、素晴らしいデモンストレーションがあの試合にはあった。あれだけの大金を得ている選手たちが、自分たちのプレーを完全にコントロールして戦い続けたことを考えると、この試合は申し分なく“スペクタクル”だったと言える」