松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹が全米OP直前に掴んだ気配。
未知のコースでの開催は吉か凶か。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2017/06/06 07:00
「何かを掴んだ」ことが表情からも見て取れた最終日。全米オープンに向かう松山英樹は、どんな計画を練っているのだろうか。
ギャラリーを沸かせた圧巻のイーグル。
早朝からのスタートとなった最終日。それでも応援に駆け付けた現地在住の日本人ギャラリーは、祈るような表情で松山の1打1打を見守った。
2番で3パットのボギーが先行。続く3番はティショットをラフに入れ、ラフからラフへと渡り歩いて2連続ボギーを喫した。
だが、4番で4メートルのバーディーパットを沈めると、それを転機に5番、6番、7番と4連続バーディーを奪って急上昇した。
折り返し後の11番。フェアウェイから打ち放った第2打はピン1.5メートルに付き、圧巻のイーグル達成。
見つめていた日本人ギャラリーは大喜びで口々に叫んだ。
「すげえー、松山!」
「いやあ、いいもの見せてもらった」
「朝から来たかいあったね」
日本から応援に駆けつけ、4日間松山に付いて回った日本人女性は「松山くんは絶対に(期待を)裏切らない」と語気を強めた。
何かを掴んだかのような、希望の表情。
とはいえ、4連続バーディーとそれに続く会心のイーグルの快進撃は、米メディアやアメリカ人ギャラリーがほとんどアテンションを払わない“前座”のような場所で発生した小さな上昇気流にすぎなかった。
だが、世界4位には本来なら似合わないそんな場所にあっても、なんとか見せ場を作り、日本人ギャラリーに手土産を持たせるところは松山の魅力。とりわけ彼が玄人ゴルファーに人気がある由縁であろう。
続く12番は短いパットを再び外してボギーを叩き、17番ではティショットを大きく右に曲げてOBを喫した末のダブルボギー。せっかくの急上昇は、あっという間に途絶えてしまった。だが、何かしら掴んだものがあったからこそ、松山の表情に希望が灯った。
「あんまりいいショットは無かったけど、パッティングは昨日ぐらいから、だいぶまともになってくれた。まだ不安の方が勝っているけど、結果、入ってくれたので」
その感触が、これから先の日々のための小さなきっかけになってくれたら――祈りにも似たその想いは、松山もファンも、きっと一緒なのだと思う。