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10度のクラブ昇格を実現した魔術師。
ポルトガルの名将、オリベイラの人生。
text by
ニコラス・ビラスNicolas Vilas
photograph byAndre Vidigal/Global Imagens/Iconsport
posted2017/05/23 07:30
ポルティモネンセとは契約更新をまだしていない。他のクラブからもオファーが殺到しているオリベイラだが、来季に指揮するクラブは未定である。
まるで父親のような存在だが、聖職者のような部分も。
親愛の情を込めて、ダセはオリベイラの人物像を語る。
「まるで父親のような存在で、どんなときでも力になってくれる。彼のオフィスのドアは常に開いているよ。それから冷静さと厳しさも併せ持っている。
僕らには常にこう言っていた。『楽しく練習するのはいいが、練習を楽しむ(楽をする)な』と。ちょっと聖職者のようなところが彼にはある。
あと、シーズンの経過を占って、それが当たることがよくあった。言ったことが次々と実現していくんだ」
「電子工学のエンジニアで身を立てるつもりだった」
とはいえオリベイラ自身は、この予言者としての評価が高まるのを快く思っているわけではない。
「別に未来学に精通してはいないよ。知識と経験から筋道を立てて考えているだけさ。サッカーは厳密な意味では科学とは言えないけど、それでも的確に分析して結果を感じ取れる瞬間があるだろう」
指導者の道に進むのは、実はそれほど積極的ではなかったと彼は言う。
「30歳で現役を引退した。ポルティモネンセが最後のクラブで、監督のマニュエル・ジョゼも同じときにスポルティング・リスボンに引き抜かれた。それで当時の会長が私を部屋に呼んだんだ。現役を続けてくれと言われるのかと思っていたら、監督としてチームを率いてくれというオファーだった。たぶんマニュエル・ジョゼの推薦だろうけど、最初は断ったよ」
なぜなら当時の彼は、選手であると同時にポルトの大学にも通っていたからだった。
「引退後はサッカーよりも、電子工学のエンジニアとして身を立てるつもりだった。だから4年半も学業を続けたけど、結局はサッカー界に残ることになってしまった」