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円盤投の世界記録は女子>男子!?
陸上記録“白紙案”とドーピング。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2017/05/14 07:00
リオ五輪金メダリストのサンドラ・ペルコビッチの記録は69m21。だが世界記録は'88年に計測された76m80だ。
国をあげてのドーピングで記録が出た女子円盤投。
先に記したように、陸上ではドーピングが後を絶たない現状がある。さらに、過去の世界記録が少なからず残っていることも特徴的だ。特に女子では、1980年代に生まれた記録が今なお上位に存在する。種目によっては'70年代の記録がトップ10にある。
しかもそれらの記録は突出しているため、「永遠に抜けない」とすら関係者が口にすることもあった。象徴的なのは、円盤投かもしれない。女子3名の記録が男子の世界記録を上回っているのだ。こうした'80年代までの記録の陰に、国をあげてのドーピングがあったことは、数々の証言によって伝えられている。ただし、取り消すこともできずに残されている。
'80年代までの驚くべき記録に対して、選手や関係者から冷ややかな態度を感じたこともある。それほどまでに尊重できない記録であれば、どこかの年代、具体的には'80年代で線引きする必要があるのではないかと考えたこともある。
陸上記録の見直しは、世界記録にとどまらないはず。
ただ、今回の提案に対しては、そのまま賛成しがたいのは否めない。
陸上記録の基準の見直しは、世界記録のみにとどまらないだろう。提案でもヨーロッパ記録もその対象になると併記されているが、そうなれば、2005年よりも前の記録すべてに波及していくことは考えられる。これは日本記録もそうだ。
白紙とされる可能性がある選手たちの記録へ挑む姿を目にして、記録を出すまでの努力に触れる機会があった。その意味を失わせることにもなりかねない。
例えば今年の新春、400mの日本記録保持者である高野進氏に取材する機会があった。誰に教わることなく自ら生み出した創意工夫が記録の背後にあることを知った。そしてそれは高野氏に限らない。