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現役ラガーマンで、教師で大学生。
小野澤宏時のデュアルキャリア人生。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2017/04/25 07:00
彼が一流のラガーマンだったからこそ許された側面はもちろんあるが、小野澤宏時のキャリア形成は多くの人の参考になるはずだ。
現役を続行しながら非常勤講師を勤め、博士課程にも。
'14-'15シーズンから在籍したキヤノンとの契約は、'16-'17シーズンを最後に満了となった。トップリーガーとしての小野澤のキャリアには、静かに幕が降ろされた。
しかし、彼は現役引退を表明していない。'18年に国体を開催する福井県のラグビー関係者から、特別強化指定選手兼コーチとしてのオファーが届いたのだ。
1年後の国体は40歳で迎える。楕円球とともに過ごす日々は、まだエピローグを迎えていない。
教育者としてのキャリアも、新しいページがめくられた。2年前から授業を持っている静岡産業大学に加え、同じ静岡県の常葉大学で非常勤講師を務めることになったのだ。
また、筑波大学大学院ののちに通った日本体育大学の修士課程を終え、4月から博士課程で学んでいる。ラグビーの方法論や指導論ではなく、より広い意味でコーチングを研究していく。
ラグビー界の問題を「勝手にどうにかしたい」。
もちろん、ラグビー界の未来にも思いを馳せる。
「勝手に色々と考えています。日本選手権で優勝したクラブが世界へ出て行けるように、国内で勝った先が用意されたらいいなと思ったり。
2019年のワールドカップ開催という祭りの後も、僕は怖いなと考えていて。トップクラスを経験した人材の多くが、現状では引退するとラグビーから離れていきます。トップリーグで指導できなかったら、自分の子どもがラグビーをやっているときだけ教えるとか、そういう関わりが多いんですね。それでは、経験が次の世代へつながっていかない……というのが問題かなと勝手に感じていて、勝手にどうにかしたいと思っているんですけれど。
普及と言えるほどの大義は掲げていないですけれど、ルールが分からないところもあるけれどラグビーって楽しいね、というようなきっかけ作りの環境を提供したいなあ、と思っているんです」
ラガーマンとして、教育者として、学生として。小野澤のデュアルキャリアは、これからも続いていく。