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世界の憧れとなった84歳の超人、
稲田弘の肉体の謎に迫る!
text by
NumberDo編集部Number Do
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2017/04/07 10:50
226kmを走り、制限時間まであと5秒で……。
そんな稲田さんが世界的にも注目を集めるようになったのは2015年10月のハワイ世界選手権。
総距離226km、制限時間17時間という80代ならずとも過酷すぎる条件の中で、稲田さんは制限時間ギリギリのタイミングでゴール前に現れました。しかし……、フィニッシュ数百m手前で、蓄積された疲労により意識朦朧となり、よろめき2回ほど地面に崩れ落ちてしまったのです。何とかゴールテープを切ったものの、わずか5秒、制限時間に間に合わず、アイアンマン完走は認められませんでした。
226kmを走りきる直前のゴール数百m手前で2度倒れ、2度起き上がり、ゴールする。その末にわずか5秒足りずに努力が報われない――こんなむごい経験をする83歳なんているのでしょうか?
当然のことながら、この“衝撃のニュース”は、SNSなどを通じて世界中に拡散されました。そして、“INADA”という名前は世界中のトライアスリートの希望となり、憧れとなったのです。
世界の“スーパーレジェンド”として。
稲田さん曰く、この“失敗”の要因は明確だったそうです。
「前日に友人に誘われてビールとお肉を食べ過ぎてしまったんです。私は胃腸は強い方だと思うのですが、レース当日は補給食がうまく喉を通らなかった。その結果、脱水症状とハンガーノックのダメージが最後に来たんです」
昨年2016年10月の世界選手権では、レース前から稲田さんはスーパーレジェントとして注目を浴びる存在となっていました。1年前の屈辱を晴らすために万全の準備を整えてレースに臨んだ稲田さんは、スイムとバイクを終え、最後のランに入ってしばらくした後、見知らぬテレビ局のクルーが車で自分を追っていることに気づきました。後でわかったことですが、追手の正体はアメリカのNBCだったそうです! プロアスリートでない、84歳の日本人アイアンマンを米国3大ネットワークである放送局が取り上げる――稲田弘という名がいかに世界に注目されているかがわかります。
見られ、撮られていることを意識した稲田さんは、“格好いい”フォームで走ろうと緊張感を保ちながら走り続け、最後の10kmは逆にペースをあげるくらいの快走で見事完走を果たしました。ゴール前で稲田さんを出迎える世界各国からの観衆の声援は地響きのようで、それはそれはすごい光景だったようです。