濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
早熟のエース・竹下幸之介を変えた、
挫折の物語と「DDTを象徴する技」。
posted2017/03/25 07:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Essei Hara
人生は一瞬で変わる。レスラーの人生は、1つの技で変わることもある。
2017年3月20日の竹下幸之介がそうだった。
この日、DDTプロレスは旗揚げ20周年記念大会をさいたまスーパーアリーナで開催、そのメインイベントが、HARASHIMAvs.竹下のKO-D無差別級タイトルマッチだった。
観衆は主催者発表で1万702人、超満員。他の団体と一線を画す“文化系プロレス”の20年、その集大成がこれだけのファンを呼び寄せた。
団体OBが大挙して登場する時間差入場バトルロイヤルあり、パワーポイントを駆使したプレゼン込みの一戦あり。ゲーム『信長の野望』とコラボした戦国武将マッチでは“大社長”高木三四郎や武藤敬司、飯伏幸太たちが武将に扮して闘った。
セミファイナルの葛西純vs.佐々木大輔は凶器使用OKのハードコアマッチ。イス、テーブル、ハシゴなどのアイテムをホームセンター「セキチュー」が提供している。こうしたアイデア、コラボレーションのうまさもDDTの強みだ。
DDTアスリート部門の将来を担う若き逸材。
文化系プロレスと対をなす“アスリートプロレス”もDDTには存在する。
鍛え上げた肉体と高い身体能力を持つ選手たちによるハイレベルな激闘は、他のどの団体にも見劣りしない。
長くDDTを牽引するエース・HARASHIMAに挑戦した竹下は21歳。高校時代にデビューを果たし、将来を嘱望されてきた。“ザ・フューチャー”と呼ばれたこともある。
187cmの長身、中学・高校では陸上競技で活躍し、現在は日体大に通う大学生だ。昨年はKO-D無差別級初戴冠も果たした。完璧な素材が、理想的な育ち方をしたように見える。