サッカーの尻尾BACK NUMBER
バルサにいまも漂うPSG戦の余韻。
後任監督選びにも影響する継続路線。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAFLO
posted2017/03/18 07:00
エンリケ監督と談笑するウンスエ(右)。バルセロナのエッセンスが、この男の頭にはみっちり詰まっている。
PSG戦で見た、ウンスエの影響力を示すシーン。
一方、ウンスエに監督経験はないものの、準備はできている。クラブと選手を熟知している点は、前者2人にはない大きなアドバンテージだ。
ルイス・エンリケの右腕。
セットプレーの専門家。
すでに練習メニューの考案やセットプレー練習は、彼が中心となって行っている。
PSG戦で印象的なシーンがあった。後半、カバーニが1点を返したときのことだ。
ベッラッティのフリーキックは左サイドから飛び込むクルザワへ、その頭での折り返しをカバーニが決めた。
ベッラッティがFKを蹴る直前、筆者はたまたまバルサのベンチ前を見ていた。
ウンスエが、鬼気迫る勢いでベンチを飛び出し、ライン際でジェスチャーを交え、必死に選手に何かを伝えていたからだ。
彼の指はベンチの反対側、ちょうどクルザワが走りこむスペースを、何度も指していた。
中央からのフリーキックの場合、サイドに後方から選手を走らせ、折り返しをフィニッシュに繋げるというエメリの定番のセットプレーを、ウンスエは把握していたのである。
しかしベンチから最も遠いエリアだった不運もあり、彼の必死の指示は伝わらなかった。数秒後、カバーニは静まりかえったカンプノウのピッチを疾走していた。
届かなかった指示。ウンスエは何かを叫びながら悔しそうにベンチへと戻っていった。
もし敗退していれば、バルサにとって、ウンスエにとって悔やまれるシーンとして残ったことだろう。
ライカールト、グアルディオラ時代を知る男。
このように、すでに彼は試合中の指示も大部分を任されている。過去3シーズンにわたり、ルイス・エンリケやスタッフ、そして選手たちと試行錯誤しながら積み重ねてきた経験は貴重だ。
ウンスエはライカールトとグアルディオラの下でもGKコーチとして携わっており、優れた監督のメソッドを内側から見てきた。彼がともに戦ってきた過去の監督たちのエッセンスは、今後もピッチの上で生き続けるはずだ。