Jをめぐる冒険BACK NUMBER
東京ドロンパが「I have a OKUBO」。
多摩川クラシコは、嘉人を巡る戦い。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/17 08:00
昨季までブーイングを浴びせた東京サポーターが味方に、声援を送った川崎サポーターが敵に。大久保を中心に、多摩川クラシコが燃え上がるのは必至だ。
両チーム上々のスタートも、内容は今ひとつだった。
振り返れば、東京が1-4から大逆転した激戦があった。川崎が7-0とボコボコにした試合もあった。
志向するサッカーにも色があり、城福浩監督と関塚隆監督による「城福トーキョーvs.関塚フロンターレ」の時代には「ポゼッションvs.速攻」、フィッカデンティ監督と風間八宏監督による「マッシモトーキョーvs.八宏フロンターレ」の時代には「最強の盾vs.最強の槍」と、異なるスタイルのぶつかり合いが熱戦に拍車をかけた。
今季序盤の戦いを見ると、両チームには共通点が見いだせる。東京は開幕2連勝、川崎は1勝1分けと、一見、上々のスタートを切ったようだが、実は、ともに満足のいく内容ではなかった。
大久保、FW永井謙佑、MF高萩洋次郎を獲得し、前線と中盤を再編した東京は、連係の構築や攻撃イメージの共有に問題を抱え、打開力のある中島翔哉をスーパーサブとして投入し、スコアをなんとか動かしてきた。
大久保、太田、憲剛、小林悠のコメントも冴えず。
チームの置かれた状態の難しさは、選手の言葉にも表れていた。
大宮戦のあと、大久保が「攻撃はまったく形にならなかったですけど、まだ2試合ですし、今はチームが勝つことが大事なので」と自身に言い聞かせるように語れば、DF太田宏介も「攻撃の連係はまだまだですけど、攻撃がスムーズになるまで、とにかく後ろが守り切って支えたい」と、まずは守備に専心することを誓っていた。
一方、川崎も大久保に代わる攻撃の目玉である家長昭博がACLの水原三星戦、第1節の大宮戦でチームにフィットせず、その家長を負傷で欠いたサガン鳥栖との2節ではトップ下に大塚翔平を起用したものの、攻撃面での迫力を欠いてしまった。
FW小林悠が「自分しか決められそうな選手がいないのはちょっと良くないなと思います。自分が決めるんだという選手がもっと出てこないと……」と危機感を募らせると、MF中村憲剛も「ネガティブに捉える必要はないけれど、かと言って、すべてがポジティブなわけでもない。チームとしてもがきながら進んでいるのは確か……」と苦しい胸のうちを吐露した。