マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
2017年の高校野球はスラッガーの年。
明徳・西浦、秀岳館・木本、そして。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/03/17 07:30
昨年夏、嘉手納戦で満塁ホームランを放って叫ぶ明徳義塾の西浦颯大。馬淵監督が優勝を宣言するのは、よほどのことである。
ボールが勝手に木本のポイントに吸い込まれる錯覚。
ノーステップだから、両足の動きがある程度拘束されているにもかかわらず、それでも自然に足でタイミングをとって、体重を左足に移し替えられる柔軟性を上半身でも発揮して、両腕の長さと連動性をフル活用。
右ヒジが入って、一瞬遅れて手首が入って、それからバットヘッドが一気に走る。“テコの原理”を十分に生かした最も真っ当なスイングから、センター方向へライナー性の打球が伸びて、打球方向の良さにも松尾、九鬼以上の可能性を感じたものだった。
呼び込んでくるタイミングも実にいい。
投手の視点から見たら、どう投げても、ボールが勝手に木本凌雅の“スイートスポット”に吸い込まれていってしまう。そんな印象のはずだ。
履正社・若林将平、盛岡大付・植田拓……。この春、前評判の高い右のスラッガーはいるが、個人的には、秀岳館・木本凌雅の合理的なバッティング技術が、右打者ではナンバーワンでは、と期待している。
植田拓は、恐れを知らぬブンブン丸。
さあ、その植田拓だ。
“好み”でいけば、このやんちゃなブンブン丸がいちばん好きだ。
高校生ぐらいなら、打者は皆、彼のような覇気と夢をスイングに持ってほしい。
たとえ、向こう見ずな夢でもいい。このひと振りの向こうに、外野に向かってぐんぐん伸びていく白球を思い描きつつ、渾身のスイングを全うしてほしいと願っている。
彼のスイングを、ただの“めちゃ振り”という向きもないではない。
しかし、思いのこもったスイングだからこそ、インパクトで強烈にボールをしばけて打球に生命が宿る。あふれんばかりの思いがついついオーバースイングにつながってしまうとしても、そこまで“振れる”ことが貴く、それはそれで立派な能力である。
甲子園の左中間、右中間なら、あっという間に三塁打に持ち込める快足も兼備して、入学した頃から隠さなかった異常なほどのプロ志向を現実に一歩でも近づけるために、さあ、この大舞台で振って、振って、振りまくれ!
最後はすっかり応援モードになってしまったが、この春の甲子園は、まるで“夏”のような弾丸ライナー、大放物線がガンガン飛び交う、これまで経験したことのないようなセンバツになる。
そんな予感に胸が高鳴っている。