話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
すべてを懸けた開幕、現実は連敗。
札幌、J1残留へもう訪れた正念場。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/11 07:00
まだ「2/34」が終わったのみ。新加入ながら主将を任される兵藤のもと、日本最北端のJクラブは反撃態勢を整える。
「5-3-2」でもJ1で90分間守り切るのは至難の業。
今シーズンの札幌は、J2時のスタイルを継続し、5-3-2のシステムで組織的な守備と速攻が軸になっている。最終ラインの5人と3ボランチで守備を固め、セットプレーなどで1点をもぎ取って勝つスタイルだ。
しかし、毎試合先制点を与えず、90分間を守り切るのはJ1レベルではかなり難しい。鹿島などはそのプランで戦えるタイプだが、それは個々の高い能力と戦術が噛み合っているからこそ成せる業だ。そもそも圧倒的な個人能力の前には、完成しきっていない組織的な守備は簡単に打ち破られてしまう。油断していると今回のようにスーパーゴールが飛んでくるのだ。
攻撃は2月の沖縄キャンプの時から、ほとんど上積みされていない。セットプレーと都倉賢からしか得点の可能性が感じられなかったのは、今も同じ。マリノスのDF陣は都倉を挟み込んで対応していたし、札幌が単純なクロスを上げたとしても、ことごとく中澤佑二に跳ね返された。
相手はボックス内の守備は強いことが分かっているはずなのに、ショートコーナーを使うなどの工夫、揺さぶりもない。かといって他に攻撃の型があるわけではない。
鉄のカーテンを敷いて臨んだはずの開幕戦だったが。
それでもマリノス相手に前半は押し込むことができたのだから、その戦いを継続できるように自信を持っていけばよかったが、そうもいかなかった。前述の通り後半立ち上がりに失点して意気消沈し、自信を失いかけたのもあるが、個人的には開幕の仙台戦の敗戦が尾を引いているように思える。
なぜなら札幌は、この仙台戦に懸けていたからだ。
戦前の情報漏れを防ぐために鉄のカーテンを敷き、万全の状態で勝ち点3を取りにいった。残留争いを生き抜くには、序盤戦が勝負になるのを理解しているからだ。だからこそ敗戦はダメージが大きかった。
歴史を振り返ってみても序盤で星を落としたチームは終盤戦、挽回できずに悔し涙を流すことが多い。例えば2012年のガンバ大阪は開幕3連敗を喫するなど序盤に苦しみ、そのシーズンにJ2に降格した。力のあるチームでさえ、序盤の取りこぼしを回復できずに落ちてしまうのだ。