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「簡単じゃない。でも不可能じゃない」
フルマラソン2時間切りへの挑戦。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byShigeki Yamamoto
posted2017/03/10 15:00
男子フルマラソンの世界記録は、2014年にベルリンマラソンにてデニス・キメット(ケニア)が記録した2時間2分57秒である。
選手達の言葉に、日本と世界の“常識”の差を感じた。
時折、コーチからペースアップの指示や、アドバイスが飛ぶ。
世界の各地から集まった多くのメディアたちも、トライアルの記録の推移を食い入るように見つめていた。
1kmあたり2分49秒という破格のペースを刻み続け、キプチョゲは59分17秒、タデッセは59分40秒でのゴールとなった。いずれもハーフマラソンの日本記録を大きく上回る記録である。それでもレース後のキプチョゲに話を聞くと、あっさりとしたものだった。
「今日は6割くらいでしょうか。まぁ、決められたトレーニングに基づいて、走り切ったという感じです。今後も本番に向けてしっかりトレーニングをしていくだけですね。
一番重要なのはメンタルだと思います。自分のリミットを超えること。人類の記録を超えられる、自分の能力を超えられる。そのことを信じるように心がけていますね」
その答えからは、日本と世界の“常識”の差を感じさせられた。
キプチョゲらは「フルマラソンで2時間を切る」ということを「難しい」とは思っても「不可能」だとは思っていない。その思考の差は、身体能力以上に大きなもののように感じられた。
“常識”をいかに壊せるか……という目標。
キプチョゲの言葉に代表されるように、ナイキの「Breaking2」プロジェクトはこれまでの“常識”をいかに壊せるか、ということを目標にはじめられた。
そのコンセプトは、実際にフルマラソンで2時間切りを目指す選手はもちろん、プロジェクトに関わる生理学者、フットウェアやアパレル製作者、デザイナーにいたるまで、チームのすべてのメンバーの頭に刻まれている。
例えば、この挑戦でランナーたちが使用するシューズ「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ エリート」はソールが一見すると非常に「厚い」作りになっている。