フランス・フットボール通信BACK NUMBER
優勝翌年に降格してしまうのか……。
ラニエリ解任で激震、レスターの宿命。
text by
ティエリー・マルシャン&フィリップ・オクレールThierry Marchand et Philippe Auclair
photograph byRICHARD MARTIN
posted2017/03/08 08:00
レスターの優勝で一躍“名将”の仲間入りを果たすはずだったラニエリ。各国トップリーグでの監督経験は豊富だが、優勝したのはレスターが初めてである。
ラニエリ「去年達成したことは忘れないといけない」
レスターは1年で急成長するとともに、彼らの考えることもまた、大きくなった。
バーディーとマフレズというふたりのスター選手の再契約を含め、すべてのバランスが失われた。8月の時点ですでにラニエリは、タイ人オーナーが生涯最高の業績を成し遂げたことの対価として、選手のひとりひとりにBMWを贈ったことを懸念していた。シーズン開幕直前に、彼は当惑しながらこう語っている。
「全員で何かを成し遂げようとするメンタリティが、去年と今年は全然違う。去年達成したことは忘れないといけない」
気持ちはよくわかる。だが、どうやって?
監督とアシスタントコーチの喧嘩まで勃発。
エンゴロ・カンテの離脱という、昨季と今季をわける唯一の違いがすべてを変えてしまった。王座に登りつめる過程でカンテが果たした役割の大きさは十分に認識されていた。チェルシーでの彼の活躍ぶりは、今さらながらその欠落がチームにいかに大きなダメージを与えたかを実感させる。
「彼なしでの最善のプレースタイルをずっと模索し続けているのだけど」と岡崎は告白するが、選手たちの目にはラニエリが穴を埋めることができたとは映っていない。
いや、彼らには監督の考えが理解不能ですらあった。
11月におこなわれたコペンハーゲンでのチャンピオンズリーグを前に、ラニエリはこれまで一度も試したことのない3-4-3を実践した。またダービーとのカップ戦では、試合当日朝に彼は練習を行った。
より厄介だったのは、クレイグ・シェークスピア・アシスタントコーチと監督の関係だった。スパイクのサイズに関してのつまらない諍いから、ロッカールームで派手にやり合った2人は、以降まったく口をきかなくなってしまった。
サム・アラダイス監督のイングランド代表スタッフをしばらく務めた後、今はレスターの暫定監督の地位にいるシェークスピアは、ラニエリとの衝突は何もなかったと全面否定しているが、誰もその言葉を信じてはいない。
解任に関しても、シュマイケルやバーディーなどリーダーと見られていた選手たちの何人かが、紋切型のコメントを述べただけだった。