イチ流に触れてBACK NUMBER
イチローも、怪我させた相手も笑う。
日本ではやれない、キツいジョーク。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKyodo News
posted2017/03/01 11:40
イチローとバーンズが激突直前の写真。体格的にも、スタイル的にもイチローとは対照的。それでも、彼らは最高の仲間なのだ。
アメフト仕込みの猪突猛進にイチローは驚愕。
メジャー歴5年、通算465試合に出場する実績を持つバーンズは、リトルリーグでも徹底されている基本を怠った。それどころか「俺も『I got it !』の声をかけた」と、言い訳するお粗末ぶりには驚かされた。
確かにメジャーでは打球の行方しか追わない猪突猛進な野手があまりにも多い。その中でもバーンズのアグレッシブぶりは有名だったらしい……。
バーンズは高校時代には一時フットボールに専念し、大学進学時には強豪UCLAから誘いを受けた経歴を持つ。
全身タトゥー入り、1メートル88センチ、95キロの肉体は強靭そのもので昨季まで在籍したロッキーズ時代には、フェンスを恐れずダイビングキャッチを試みることから「スーパーマン」とも呼ばれていた。
イチローの署名入りで「お前はクビだ!」。
果敢なプレーでフェンスに飛び込むのは自身の勝手だが、味方を傷つけてしまうようなアグレッシブさはいただけない。それが真剣勝負の公式戦ならばまだしも、キャンプ中のしかも基本練習での出来事ではまさに「こまったちゃん」そのものだ。
それでもこのマーリンズというチームは南国気質そのものなのか、本当にほんわかしている。イチローも「最高のチームメイト」と、常日頃話すが、この日もその雰囲気の良さが顔をのぞかせた。
メジャー3030安打を放つチームの至宝のアクシデントに一時は空気が凍りついたが、大事には至らないことを知った途端にナインのいたずら心が炸裂。
イチローの弟分、ディー・ゴードンが黄色い紙に「お前はクビだ!」と書き、イチローにサインをもらう。その宣告書をバーンズのロッカーに貼り付けると、クリスチャン・イエリチとジャスティン・ボアがロッカールームを綺麗に片付け荷物を完全撤去。気付けばネームプレートも外され、クラブハウスの中は大爆笑の渦に巻き込まれた。