話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
川崎に縁遠かった“勝負強さ”が!?
攻撃が未完成でも勝利した開幕戦。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/02/28 11:30
相棒・大久保嘉人が去っても、中村憲剛に落胆の色は見えない。新たなパートナーと、新たなサッカーを築き上げていく。
家長「まだチームに入り切れていない」
本人たちも歯痒いのだろう。家長は、「まだチームに入り切れていない」と難しい表情を見せ、阿部も「呼吸が合わない」と厳しい表情を見せた。
大宮戦での2人は、そういうシーンがたびたび見られ、まるで迷子のようだった。
家長は動きが少なく、足元で受けるばかりで狙われていたし、ゴールへの意欲があまり見えなかった。阿部は懸命に動き出してはいたがボールが出てこず、中村との絡みも少なくて攻撃に関与できていない。
阿部は、悔しさを噛みしめるように言った。
「正直、まだまだです。バイタルエリアで受ける回数が少ないんでシュートが打ててないですし、自分のポジショニングの問題もあります。受け手としてどれだけいいポジショニングを取れるか、出し手にどれだけ見てもらえるか。そこがまだ全然で、お互いの距離の問題もあります。もっと憲剛さんの近くでプレーすべきなのかが、つかめていない。そういうところを含めて、詰めていかないと」
懸命に動いてはいるが、まだ味方に自分の動きを理解してもらっているとは言いがたい様子だ。しかも後半、家長に代わって森本貴幸が入ってリズムを改善するなど、移籍組はウカウカしてられない状況だ。
憲剛「まだ、アキも阿部ちゃんも遠慮している」
阿部は、どうやってこのチグハグ感を解消していく気なのだろうか。
「試合をこなして、勝っていきながら理解してもらうしかない。ただ、僕らもまだ余裕がないんで、マニュアル的な動きが多いかなと思います。だから相手に読まれてしまう。こんな動きをするんやっていうのを、チームでわかってきたら相手もつかみづらいと思うけど、今はここに入ってくるやろというのが相手にバレている。それをどう修正していくか。もっと僕ら新しく入った選手がエゴを出してもいいかなと思います」
阿部は、自分に言い聞かすようにそう言った。
中村は、彼らの難しい状況を十二分に理解している。
「まだ、アキも阿部ちゃんも遠慮しているし、彼らはまだ計っているところがあると思うんです。ただ、これは慣れだと思うんです。攻撃のユニットが大きく変わったんで、今までのような阿吽の動きを簡単には生み出せない。うちには攻撃のパターンがないですし、アドリブでやっていく中で、ここに入っていけば崩せるんだというのを感じてやっていかないと面白い攻撃ができない。だから、これからもコミュニケーションを取りながら結果を求めつつ、地道にやっていくしかない」