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筒香&坂本を導く松井秀喜の打撃論。
メジャー仕様か、自分らしさの徹底か。
posted2017/02/27 17:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
「とんでもない世界に来たと思った」
前年に巨人で50本塁打の大台に到達し、2003年に意気揚々とニューヨーク・ヤンキース移籍を果たした松井秀喜さんが、メジャー1年目のキャンプを振り返って吐いた言葉だ。
実際にメジャーの投手たちと対戦すると、日本の投手とは全く異質のボールを投げてくる。しかも使用球自体が重く、飛ばないようにも感じた。
日本で経験した野球とアメリカのベースボールは全く異質だったということなのだ。
「自分のバッティングを変えようとは思わなかった。でも意識は変えなきゃいけないと思いました。日本と同じように前で打っていたら、メジャーの投手のボールはそこで動くので変化についていけない。だから……」
後ろ足に重心を残して逆方向に強くボールを叩けるようにする――これが速くて重くて動く、メジャーの一流投手のボールを打つために、松井さんが到達したバッティングの結論だった。
松井秀喜の“愛弟子”、坂本勇人と筒香嘉智。
3月7日に開幕が迫った第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンド。日本代表の侍ジャパンにはこの松井さんの“愛弟子”が2人いる。
巨人の坂本勇人とDeNAの筒香嘉智だ。
坂本は昨年の宮崎キャンプで松井さんから「右軸で回転できるようになった方が安定する」とアドバイスを受け、打撃フォームを改造。大きく上げていた左足の上げ幅も少なくして、よりシンプルな打ち方になり、昨シーズンは首位打者のタイトルを獲得した。
筒香は入団3年目から逆方向に強い打球を打つという目標を掲げて、ドミニカのウインターリーグに参加するなどして自分で試行錯誤を繰り返してきた打者だ。その筒香の打撃に「間違っていないし、その打ち方を進化させていけばいい」と松井さんがお墨付きを与えたのが、一昨年の宜野湾キャンプだった。
「松井さんに言われて自分のやってきたことが間違いではなかったと確信が持てた」
こう振り返った筒香は翌'16年に44本塁打を放ってホームランバッターとして本格的に覚醒を果たした訳である。