リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
柴崎岳と対照的な乾貴士の順応。
スペイン好みの“我”を出してこそ。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2017/02/18 07:00
バルサ戦で先発した乾はメッシとマッチアップする場面もあった。EL圏内が見えてきたエイバルで、攻撃の一角として高評価を得ている。
全国レベルのメディアから「攻守に穴のない選手」。
かくして乾は2015-2016シーズンの第5節レバンテ戦でデビューした。当初はプレーにバラつきがあったが、継続的にピッチに立つと、やがてサウール・ベルホンから左サイドのポジションを奪い取った。またこの1年を通しての成長は著しく、特に目を引いたのは守備面だった。
サイドバックのサポートや中盤での連係が滑らかになり、シーズン終盤には全国レベルのメディアでも「攻守に穴のない選手」という評価を得るようになった。
心配された言葉の問題はベアのドイツ語、そしてクラブが用意した通訳が解決したが、乾自身の資質も大きい。
「非常に賢く、努力家だ。何を要求しても一度目で理解してしまう」
メンディリバル監督自身はこう称賛している。
バスクの穏やかな町のクラブだったことも追い風に。
一方で新たな環境への順応に関しては、緑あふれるバスク地方の穏やかな町を本拠地とし、家族感ある小さなクラブに入ったことに助けられたのかもしれない。
いつも笑顔で、チームメイトにイタズラを仕掛けられてはやり返し、散歩をしては人々に優しく声をかけられる。
この時点で乾はリーガに前例のない日本人選手となっていた。
そして迎えた2年目の今シーズン。
開幕節のデポルティーボ戦こそ先発したものの、乾はその後しばらく出番を失っていた。エイバルにとっても重要かつ難しい1部での3年目。守備ブロックとサイドアタックの強化を目論んだメンディリバル監督だったが、こんな不満を口にしていた。
「気前がよすぎるんだ。ドリブルで抜くより間違いのないパスを選んでしまう。もっと深く攻め込んでいかなきゃいかん。ボールを持ったら勇気をもって、大胆に、もっといろいろやってもらいたい」