リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
柴崎岳と対照的な乾貴士の順応。
スペイン好みの“我”を出してこそ。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2017/02/18 07:00
バルサ戦で先発した乾はメッシとマッチアップする場面もあった。EL圏内が見えてきたエイバルで、攻撃の一角として高評価を得ている。
財前宣之から柴崎まで、リーガは鬼門である。
こうした状況でポジションを得るには、まずチームとリーガへの適応が万全であることをプレイをもって証明し、自分の起用がリスクではないことを監督のみならずファンにも納得してもらわねばならない。
早急にコンディションを整えないと、柴崎は足跡ひとつ残すことなくスペインを去ることになるかもしれない。
今回の柴崎のケースを見てあらためて思うのは、日本人選手とリーガの相性の悪さだ。1996年の財前宣之から今年の柴崎まで、リーガ(2部を含む)に挑戦した日本人は計18人いるが、「成功した」といえる選手はまだたったの1人しかいない。
それは1月22日の第19節バルサ戦で「日本人選手のリーガ最多出場記録」を塗り替えたエイバルの乾貴士である。ちなみに、それまでの記録は2005年1月から2006年6月までマジョルカに所属した大久保嘉人の39試合だった。
乾も加入当初は不安要素が書き立てられたが……。
とはいえ、乾がエイバルに入団した2015年夏の地元紙を紐解くと、やはり不安要素が書き立てられていた。
やれ話題にはなるものの、それほど活躍しない日本人選手の獲得に当時のクラブ史上最高額の移籍金30万ユーロ(約4000万円)を払うのか。
やれスペイン語を解さないのに、戦術と団結を武器に戦うエイバルで使い物になるのか。
そして就任2年目だったメンディリバル監督も、乾のことを知らなかったという。
しかしアシスタントコーチのイニャキ・ベアが何度も確かめた上で乾を薦め、スポーツディレクターが了承したことで、監督も首を縦に振った。パスを繋ぐことができて、ボールの支配率を上げられて、セットプレーが巧い。そしてよく走る献身的なサイドプレイヤーという要件を乾は完璧に満たしていたからだ。