球道雑記BACK NUMBER
育成新人が異例の一軍キャンプに。
ロッテ菅原祥太、大学中退後の反撃。
posted2017/02/03 07:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
「硬球が可哀想ですよね。今にも潰れそうで」
担当スカウトの諸積兼司が、彼の超凡なパワーで打ちつけられるボールを見ながらそんな感想を漏らした。
「カーン」というよりは「ゴン」。
後から思い返すと、あれは木製バットというよりもハンマーで叩いたような衝撃だった。千葉ロッテ育成ドラフト2位・菅原祥太のパワーは日本人離れ、いや野球人離れしていた。
菅原はチームが毎年行う新人選手を対象とする身体測定で、歴代記録を塗り替える驚異的な数値を叩き出して周囲を驚かせた。伊東勤監督も「ちょっと今まで(ロッテに)いなかったタイプ」と彼の規格外のパワーに期待を寄せ、2月1日から始まる石垣島春季キャンプでは育成新人選手としては異例の一軍スタートを決めた。
担当スカウトの諸積が偶然見つけた「原石」。
菅原を初めて見た日のことを諸積はこう振り返る。
「守備からベンチに帰ってくるときの走りを見て、『これは身体能力が高いな』ってすぐに感じましたね。体の使い方がひと際違うんですよ。その日の試合で彼はヒットを打ったんですけど、この打球がまた凄く良かった」
この日、諸積の目的は菅原ではなく、社会人チームに属する別の選手だった。しかし突如として現れたとんでもない「原石」に心を奪われ、その興奮を抑えきれないまま上司へ連絡をした。
「凄い選手がいました」
2回目に菅原を見たのは“ついで”ではなく、彼の所属する日本ウェルネススポーツ大学にアポイントを取ってからだった。そのことは同大学の監督である工藤洋一から菅原本人にも伝えられた。
「スカウトが自分を見に来る」
その興奮で、前日の夜はなかなか寝つけなかったと菅原は言う。