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ロジャー・フェデラー、復活を語る。
「自分がこんなにテニスが好きだとは」
text by
ヘレン・スコットスミスHeren Scott-Smith
photograph byHiromasa Mano
posted2017/01/30 12:40
1981年8月8日、スイス・バーゼル生まれ。怪我のため昨夏から欠場し今季開幕から復帰。185cm、85kg。
自身が不在のテニス界に、フェデラーが感じたこと。
人々は、フェデラーはテニスコートで手にしうる全てを、すでに手中に収めたと感じているはずだ。事実、彼は史上最多である302週の1位在位記録を持ち、生涯グランドスラムも達成している。しかしフェデラーの復帰に掛ける情熱と頂点奪還に燃える野心は、35歳を迎えた今も、少しも衰えることはない。彼を今なおテニスコートへと駆り立てる原動力とは、果たして何か? そして今季、さらにはその先に、彼は何を見ているのだろうか……?
――新シーズンの具体的な目標はありますか。
「もちろん、理想は再びグランドスラムで優勝することと、世界1位の座に戻ること。そしてもし、いつまでテニスを続けたいかと聞かれれば、『2018年もプレーしたい』と即答するよ。ただ全ては、復帰した時のフィジカル次第だろうね。だから復帰から5大会ほど戦った後……たぶん4月頃に、自分の状態が把握できるんじゃないかな。3試合連続で問題なくプレーできれば見通しは明るくなるし、そうなるのではと感じてるんだ。正直、全豪オープン前にこんなに良い準備ができたのは久々だからね。もちろん20年に及ぶツアー生活は、大きな負担を僕に強いてきた。それでも僕の身体は、多くの人達が考えているよりも遥かに元気だと思うよ。まずは残り2カ月間、焦らずしっかり準備していく。5セットマッチを4時間以上ぶっ続けで戦うことを想定してトレーニングしているんだ。まだあまり先のことは考えられないけれど、全豪オープンが楽しみなのは間違いないよ」
「自分にはまだ改善の余地があると感じているんだ」
――なぜそこまで、高いモチベーションを今も維持できるのでしょう?
「なぜって? テニスを愛しているからさ。テニスという競技そのものをね。多くの人は、『ロジャーは手に入れられるもの全てを手にした』と思っているかもしれない。でも僕は、自分にはまだ改善の余地があると感じているんだ」