JリーグPRESSBACK NUMBER
2年前のレギュラーがほぼ全滅――。
それでも人が集まる湘南スタイル。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/01/24 11:00
昇格と降格を何度も体験してきた。それでも湘南はJリーグの中で“ブランド”を確立しつつある不思議なクラブだ。
今年は、高校ナンバー1のDFが湘南を選んだ。
J2降格によって移籍に踏み切った選手がいた現実を、坂本は真正面から重く受け止めている。同時に、'12年の現役引退とともにクラブの営業職に転身し、昨年8月から現職に就いたレジェンドは、まったく違う未来図も思い描いていた。
「主力選手を引き留められなかったとしても、出て行った選手を上回るような選手が控えているような状況を作りたいんです。育成組織からトップに昇格する選手や、高校、大学、他クラブから選手を獲得したりして、出て行った選手を補って余りある選手を揃える。そういうサイクルを作るべきだと、自分に言い聞かせています」
近未来のベルマーレを背負う素材が、'17年の新入団選手にはいる。市立船橋高校のキャプテンにして、高校ナンバー1のDFとの評価を集めた杉岡大暉が入団してきたのだ。「J1のクラブからもオファーはありましたが、このクラブなら自分が日々成長できると思いました」と、18歳の長身センターバックは声を弾ませる。
J2の湘南にJ1のレギュラークラスが来る理由。
柏レイソルから期限付き移籍してきた秋野央樹も、ベルマーレのサッカーに魅せられたひとりだ。昨季はJ1リーグの23試合に出場し、ゲームキャプテンを任されることもあった22歳は、当然のことながらレイソルに残ることができ、J1の他クラブでプレーすることもできた。それでも彼は、平塚市の馬入グラウンドで練習することを選んだ。
「去年のシーズンにベルマーレと3回対戦したんですが、ひたむきにボールを追いかける姿勢やアグレッシブさ、球際で戦うといったところを強く感じました。それは自分に足りないところで、レイソルでも意識してやればできることですが、レイソルでは他の部分で補うこともできます。でも、ベルマーレではそういったことをしっかり表現しないとピッチに立てない。ここでやったら自分は成長できると思ったんです」
Jリーグ随一と言っていいハードな練習には、「期待以上です」と笑みをこぼす。チーム始動から数日で、秋野は自らの決断に確信を抱いている。
「J1からJ2へ行くなんて、何をしてるんだと思われるかもしれません。けれど、自分が成長するためにはここでやることが実は一番の近道かな、と。J2はJ1よりレベルが低いとも、簡単に昇格できるとも考えていません。そのなかで、自分が成長できるのはこのクラブだ、と思っています」