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2年前のレギュラーがほぼ全滅――。
それでも人が集まる湘南スタイル。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/01/24 11:00
昇格と降格を何度も体験してきた。それでも湘南はJリーグの中で“ブランド”を確立しつつある不思議なクラブだ。
送り出した選手が湘南に戻るケースが増える?
ただ、と真壁は続ける。溢れるほどのバイタリティでクラブを牽引してきた会長は、表情に悲壮感を浮かべることなく話すのだ。
「秋元のようなケースがこれから増えるんじゃないかな、と思っているんです」
'16年にFC東京へ移籍したGK秋元陽太は、わずか1年でベルマーレへ戻ってきた。昨シーズンはレギュラーとして活躍しており、J1で引き続きプレーすることもできた。FC東京を離れることが明らかになれば、他クラブが触手を伸ばしてきたはずである。
それなのに、秋元はJ2へ降格した古巣へ帰還した。「結果で恩返ししたい」と、言葉に力を込めるのだ。
移籍を経験した選手が、30歳くらいで戻れる場所に。
真壁が解説する。
「菊池大介にしても、ウチのクラブで一番と言っていいくらいに海外志向が強かった。それならばウチよりレッズのほうが可能性があるかも……と考えるのは分かる。選手のキャリアとして見ても、移籍を経験するのは悪いことではない。そのうえで、移籍をした選手たちが30歳ぐらいになってもう一度戻ってくるような環境を、作っていきたいと考えている。湘南スタイルを知る選手が戻ってくれば、それが遺伝子として継承されていくことにつながりますから」
トップチームを統括する坂本紘司スポーツダイレクターは、真壁の見立てに大きく頷く。2度のJ1昇格に貢献したクラブOBでもある彼は、選手たちの本音に触れてきた。
「出て行った選手たちも、ベルマーレでやりたい気持ちがあるなかで違う選択をした、というところがあります。新たな目標を追いかけたい、という選手ばかりだったと思います。もちろん、J1に居続けることで選手を引き留められる現実はありますから、最優先事項として考えるのはJ1に定着できるチームを作ることです」