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補欠なし、卑屈なし、フレンドリー。
米と日本、スポーツ育成の違いは?
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byAFLO
posted2017/01/24 08:00
バスケットボールコートはアメリカのどこにでもあり、その全てがNBAに繋がっている。アーモン・ジョンソンも、その階段を上った1人だ。
後のNBA選手も、家庭は崩壊していた。
「彼がやって来たのは、13歳の時でした。崩壊家庭に育ち、マナー1つ知らなかった。父親はいるのかいないのか分からず、学校はしょっちゅうエスケイプ。よく暴れましたね。技術があるものですから、周囲の子を見下していました。だからパスを出さない、周囲を使えない。でもバスケットボールはどれだけ秀でたテクニックを持っていても、1人では勝てません。
アーモンが音を上げるまで1on1をやったものです。とにかく言うことをきかなかったので、将来性があるかどうかも分からなかった。時には、徹底的に敗北感を味わわせようと、負けを教え込んだこともありますよ。ただ、彼はどこかで父親を求めていたように感じます」
学業を疎かにすると、選手登録が抹消される。
ほどなく全力で子供たちと向き合うウィリアムズの姿勢が評判となり、「我が子が楽しんでいます。ありがとう!」と地元企業が次々にスポンサードしてくれるようになった。
「アーモンが高校に進学した折に叩き込んだのは、学業を疎かにすると選手として終わる、ということです。ほぼ全ての高校が、AAU(全米体育協会)に加盟していますから、成績の評定平均が2.0を下回ると、選手登録を抹消されます。学生の本業は勉強ですからね。
まして、NBAは高校中退者など認めません。大学での活躍が認められてこそプロの道が開けます。恥ずかしながら私の成績はかなり低空飛行でしたが、バスケットボールを続けるために、最低限のスコアは保っていました」
アーモン・ジョンソンは、2010年のドラフトに掛かり、ポートランド・トレイルブレイザーズに入団。だが、2シーズンで下部組織に降格した。
それでも、故郷に帰ればバスケット好きの子供たちからは英雄として迎えられ、指導を仰ぎたいと声が掛かる。
スポーツ先進国と比較し、日本にはウィリアムズのような哲学を持った指導者が圧倒的に不足していると私は思う。