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補欠なし、卑屈なし、フレンドリー。
米と日本、スポーツ育成の違いは?
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byAFLO
posted2017/01/24 08:00
バスケットボールコートはアメリカのどこにでもあり、その全てがNBAに繋がっている。アーモン・ジョンソンも、その階段を上った1人だ。
小学生レベルでは、まず補欠を作らない。
更に言えば、小学生レベルではレギュラーと補欠を作らない。エントリーした子供は、必ず公式戦でプレーさせる。光ったモノを感じさせる子も、習い事の1つのように参加する子も、まずは同じ土俵でプレーし、チームワークを育む。そして前者は、選抜チームや上のカテゴリーに進んでいく。
NCAA等で活躍したキャリアを持っているコーチもいるが、日本のように「教えてやる」というニュアンスではない。ある部分で教育者であることを自覚しているし、小学生相手の指導者は基本的にフレンドリーだ。
アメリカ合衆国で最も国民に愛されているスポーツはフットボールである。サッカーではなく、我が国でアメリカンフットボールと呼ばれるものだ。その次がバスケットボール。そして、かなりの差があって、ベースボール、アイスホッケーと続いていく。『スポーツ・イラストレイティッド』誌のシニアエディターの言葉であるから、確かな情報であろう。
荒んだ子ども達を数万人育ててきたコーチの言葉。
そんな国の子供たちが、まず親しむのがバスケットボールだ。フットボールやベースボールはヘルメット、プロテクター等の道具にカネが掛かるが、あらゆる公園にフープがあり、5ドルのボール1つで何時間でも楽しめる。
1991年に自らの手でバスケットボール・アカデミーを立ち上げ、延べ2万5000人以上のティーンネイジャーと接したマット・ウィリアムズ(48)は、「コーチは教育者でなければならない」と語る。
「私のアカデミーに入団して来る子供たちの70%以上は、荒んでいます。親の顔を知らない、親が犯罪者となった、あるいはシングルマザーが2つ以上の仕事を掛け持ちしていて、まったく面倒を見てやれない……など。私はバスケットボールを手にする第一歩として、『人を敬う気持ち』を持たせるように指導していきます」