プレミアリーグの時間BACK NUMBER
CL首位通過と、プレミア降格危機。
レスターが直面する奇跡後の現実。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2016/12/17 07:00
かつて辛酸を舐めながらも昨季レスターで息を吹き返したラニエリ監督とバーディー。再びの逆境で真価を発揮できるか。
献身的な岡崎をベンチに置く試合が多かった。
そのカンテがチェルシーに引き抜かれた後、新たにボランチを務めるのはナンパリス・メンディだが、穴埋めに至っていない。また俊敏なセーブで最後の砦となっていたカスパー・シュマイケルは、右手に全治1カ月半の怪我を負って11月から不在となっている。
そして昨季以上に守備面で苦しいチーム事情でありながら、クラウディオ・ラニエリ監督は、中盤での守備を献身的にこなす岡崎慎司をベンチに置いて臨む試合が多かった。
この状況に、識者は厳しいコメントを寄せている。「ハングリー精神を失っている」と指摘したのは、メンタルには一家言をもつロイ・キーンだ。しかもその理由は、昨季のリーグ優勝の反動ではなく、大幅年俸アップによる「精神の弛み」が原因とみなされた。そして得点源だったはずのバーディーは、マイケル・オーウェンに「天性のストライカーではない」とまで言われた。
1年前は首位でも、2年前の同時期は最下位だった。
第15節終了後の成績は、4勝7敗4分で勝ち点16の14位。首位だった1年前と比べると勝ち点が半減し、黒星は6つも増えている。ちなみに昨季も第15節を終えた時点での14位はチェルシーで、奇しくも2年連続で前年度王者の低迷が取り沙汰されることになった。
とはいえ、レスターはチェルシーとは違う。同じプレミア王者でも、連覇が有力との下馬評を受けたチェルシーに対し、今季のレスターはタイトル防衛などサポーターでさえ期待してはいなかったはずだ。
それもそのはず。2年前の第15節終了時、レスターは勝ち点わずか10、最下位に沈んでいたのだから。
昨季の優勝は誰もが認める奇跡。そして、再び起こるとは思えないからこそ、奇跡は奇跡なのだ。
カウンターが生命線のレスターに対して、引いて守る対戦相手が増え、頼みのバーディーも簡単には走らせてもらえない。こうした点を加味すれば「良くやっている」と言っても的外れではないだろう。