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ジョセフジャパンの「賢いラグビー」。
相手にボールを渡してから攻める?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2016/11/25 11:00
組織力が機能しづらいバラけた状況に活路を見出すのはジェイミー・ジョセフの十八番。日本でも花開くか。
ポゼッションを渡す、という作戦。
しかし、どうやらそれは勘違いだったようだ。FBとして安定したディフェンスを見せ、アタックでは果敢に相手ディフェンスに切り込み、危険な香りを漂わせた松島幸太朗は試合後にこう話していた。
「キックを蹴って再獲得できればいいんでしょうけど、相手に攻めさせて、そこでプレッシャーをかけるという作戦なので、今日は良かったんじゃないですか」
どうしても、W杯で見せたラグビーが残像として残っているので、キックを蹴ることで相手にポゼッションを渡してしまうことに違和感を覚えていたのだが、これからは観る側も発想を変えなければいけないようだ。
ラグビーでは「攻めさせる」ということが作戦として成り立つのである。
そして日本代表の思惑通りに攻めさせるのなら、キックの精度が重要になってくる。SHの田中も「僕や田村のキックがより正確になれば、もっと有利に試合を運べるんじゃないかと思います」と話していた。
フィジー相手にキックはあまり得策ではないが……。
今回の「ノベンバー・テスト」も、26日のフィジー戦でフィナーレを迎える。日本代表としては、ここで勝って2勝2敗でシリーズを終えたいところだ。
ポイントはキックの使い方だ。
フィジーは、リオデジャネイロ・オリンピックの7人制ラグビーで金メダルを獲得した「セブンズ大国」だ。スペースがある形でボールを渡してしまうと、想像もつかない奔放なプレーで相手を抜き去ってしまう。もちろん、15人制でもBK陣は同じように力強いランが武器だ(先週末のイングランド戦でも、決定力を見せている)。
そうなると、キックを蹴って「攻めさせる」ことが得策ではなくなる。キッキング・ゲームをゲームプランの背骨にするジェイミー・ジャパンとしては、ウェールズ戦から大幅なプラン変更が求められる。