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ジョセフジャパンの「賢いラグビー」。
相手にボールを渡してから攻める?
posted2016/11/25 11:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
30-33。
ウェールズ相手に敵地カーディフで、現状では最善のパフォーマンスを見せた「ジェイミー・ジャパン」を見て、こう感じた。
昨年のW杯の結果は、これまでの日本ラグビー界の頂点に君臨するものであり、どうしてもイメージが消しづらい。しかし、ジェイミー・ジョセフが率い、アタック・コーチにトニー・ブラウンが就任した新しいジャパンは、コンセプトが違う。
エディー・ジャパンの要諦は「ポゼッション」にあった。基本的にはボール支配率を高めることで、主導権を握る。選手にはボールをリサイクルできる強さ、安定性が求められた(ただしW杯の南アフリカ戦では、攻めずにキックを用いた。臨機応変の戦い方が出来たのである)。
田中史朗が「賢いラグビー」と表現するスタイル。
では、ジェイミー・ジャパンの「肝」はどこにあるのか。
スーパーラグビーのハイランダーズでふたりの下でプレーした田中史朗は、こう話す。
「賢いラグビーを目指していると思います」
ウェールズ戦を現地で取材した印象でいえば、ピッチ上のリーダーたちが「時」と「場所」をわきまえている。
自陣から無理なアタックを仕掛けることはせず、しっかりとキックで陣地を進める。前回のコラムでも書いたが、キッキング・ゲームがジェイミー・ジャパンの要諦であり、ウェールズ戦でも陣取りで優勢になった場面もあった。ポゼッションはこだわらないから、国際レベルでは小柄なFWにも優しい。
ただし、場面によってはキック・チェイスが遅く、戦術が必ずしも徹底されていない印象も受けた。