錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
ラリーで圧倒し、サーブに屈した激戦。
錦織圭が世界1位を追い詰めた200分。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2016/11/17 17:10
敗れたとはいえ、錦織の高度な技術とアグレッシブなプレーは、世界のメディアから称賛されていた。
29歳のマレーが世界一になり、27歳の錦織は刺激を?
錦織自身は2日前、新王者へのリスペクトを語っていた。
マレーが29歳になって世界ランキングでナンバーワンになったことが、来月には27歳になる錦織にとって励みになるという意味で「勇気を与えられたり、うれしいことなのか」と質問され、「いや、なんにもうれしくないですね」と即答。
狙ったのかどうか笑いを誘い、「マレーは若い頃からずっとトップでやってたので、自分と比べれば明らかな差がある」と続けた。
マレーとは、2年7カ月の年齢差。
初のツアータイトルが18歳2カ月だった錦織は、マレーの初優勝より数カ月早い達成となるのだが、通算タイトル数は錦織の11に対して43、そこには3回のグランドスラムと14回のマスターズシリーズが含まれている。
錦織はマスターズもグランドスラムも準優勝が最高だ。
「自分が良いテニスをしていたのが一番大事」
自分と明らかに差があると感じる相手との勝負に挑むとき、頼りになるのは自分自身がいいプレーをしている、いい状態にあるという実感しかないだろう。
錦織にはそれがあった。
ラウンドロビン初戦となる対スタン・ワウリンカ戦でこれ以上ないスタートを切っていた。
世界ランキング3位、グランドスラム優勝3回のワウリンカを、彼が本調子からは程遠かったことを差し引いたとしても、ストレートセットで破ったことは自信になる。しかし、それ以上に大事なことは自分のプレーの内容だった。
「相手がどうこうというよりも、自分が良いテニスをしていたのが一番大事なこと」
そのワウリンカ戦に持ち込んだ自信の中身は、「しっかりいい練習ができた」という手応えだ。
パリ・マスターズでは3回戦でジョーウィルフリード・ツォンガに敗れたことと引き替えに得たものが、この大会への少し長くなった準備期間だった。残念な結果の中でも小さな自信を積み重ね、膨らませてきた。