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中田翔はなぜ5番ではなく4番か。
侍ジャパンの難問「筒香嘉智の後」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/11/15 13:30
日本ハムでは、不動の4番として中田翔は存在感を発揮していた。しかし侍ジャパンでは、また異なる要素が絡んでくるのだ。
なぜ4試合とも4番は中田翔だったのか。
WBCのような1敗が重く、1つの黒星が命取りともなるような大会では、とにかく1点ずつ、確実に得点を積み重ね、それをいかに守り抜くかが勝利への方程式になる。
そのために侍ジャパンの4番に求められる資質は、一発だけではなく、ボールを引きつけて逆方向に打てるメジャー対応型の打者である必要がある。
だが、どうやら小久保裕紀監督の考えは違うようである。
「4番は中田か筒香。いずれにしろこの2人の内のどちらか」
11月10日から行われたメキシコ、オランダ相手の強化試合後に小久保監督はこう語っている。ただ、実際には強化試合全4試合の4番に中田翔(日本ハム)を起用し、改めて4番・中田の考えを強く打ち出した形だった。
元々自身がそうであったように、「投手の左右に関係なく不動の4番とするためには右のスラッガーが理想」という考えが小久保監督にはある。それだけではなく今の代表メンバーを見回せば、中田は有力な4番候補であるし、その資質があることも確かだ。
ただ、筒香が候補であることも間違いない。そればかりか今季の成長も含めて、多くの評論家やメディアそしてファンが「4番・筒香、5番・中田」という並びを予想していた中で、あえてそれをしなかった理由はどこにあったのだろうか。
キーワードは「筒香の後ろを打つバッター」。
決断の背景となる言葉がある。
「筒香の後ろを打つバッターが1つのカギとなる」
強化試合を前に、打線編成のポイントに言及した小久保監督の発言だ。
要は筒香の後ろに威圧感のある打者を置かなければ、大事な場面で相手投手は筒香と勝負してくれない。しかももし勝負を避けられ、歩かされた場面で次の打者が打てなければ得点力は上がらない。要は最も信頼する筒香をいかに生かす打線が組めるか。そこがカギだと言っているわけである。
この発言を受けて初戦のメキシコ戦では内川、第2戦では坂本、第3戦では大谷翔平(日本ハム)、第4戦では鈴木誠也(広島)と4つのパターンをテスト。内川は1安打に終わったが、他の3人はそれぞれが期待通りの結果を残した。