マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「小野でよかったんや」と唸らせる男。
無名の阪神2位・小野泰己は素材◎。
posted2016/11/16 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
1位指名は佐々木千隼(投手・桜美林大)でよかったのではないか。
大山悠輔(内野手・白鴎大)は2位でも獲れたんじゃないのか。
阪神タイガースの「2016ドラフト」上位指名には、球界内外でさまざまな反響があった。
その理由の1つに、2位指名が比較的無名の大学生投手・小野泰己(富士大)だったことも少なからず関わっていたのではないか。
たとえば2位に、社会人No.1投手と評された酒居知史(大阪ガス・千葉ロッテ2位)や、甲子園での150キロ前後の速球で注目された高橋昂也(花咲徳栄高・広島2位)を挙げていたら……。
「阪神2位指名」の段階でまだ残っていた“名のある”投手を挙げていたら、1位・大山悠輔とのセットで考えて、まだおさまりがよかったのでは。そんな見方をする向きもあった。
その富士大・小野泰己がドラフトの2日後と3日後に、公式戦で登板する姿を見る機会があった。
ほぼ1ヶ月ぶりの公式戦でコンスタントに145キロ。
明治神宮大会の「東北地区代表決定戦」。
東北の3つの大学リーグ戦の優勝校、そして青森大が、仙台に集まって行われた。
南東北大学リーグの優勝校・福島大と対戦した1回戦。先発した小野泰己は、7イニング投げて4安打8奪三振1失点に抑えて、決勝戦に進んだ。
秋の訪れが早いみちのくでは、大学の秋のリーグ戦も8月に始まって、9月のなかばには終了してしまう。
この日、ほぼ1カ月ぶりの公式戦登板だったという小野だったが、コンスタントに145キロ前後をマークする速球にチェンジアップ、100キロを割るカーブを見せながら、フォークを勝負球にして打者のタイミングを外し、フルスイングさせないピッチングで、打ち損じの山を築いてみせた。