フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
十代のメダリスト3人と元女王。
フランス杯で見た浅田真央の涙。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2016/11/14 17:30
大会会場の取材現場では「自信を失った」「全てを失った」と赤裸々な心情を吐露した浅田。再びその笑顔が見られる日を、待ちたい。
何かに挑もうにも……体調不良だった浅田真央。
一方、浅田真央は膝の痛みなどを理由に、3アクセルには挑まないとかねてから宣言していた。日本から大勢の浅田ファンが応援に駆け付けてきていたが、心の痛む大会となってしまった。
SPでは2アクセル、3フリップ+2ループ、3ループを降りて、最後まで流れを崩さずに滑り切った。3フリップは回転不足の判定となったものの、本人は演技後に「日本にいるときの練習から比べると、まずまずまとめられてほっとしています」と明るい表情を見せた。
だがスケートアメリカから何か意識して練習してきたことはあるかと聞かれるとちょっと表情を曇らせて、「今回は自分の調子がすごく良い状態ではなかったので、良いジャンプをイメージしてそれだけを考えて、あとはまとめられればいいな、とそれだけで精一杯でした」と語った。
自分の体の不調や痛みについては決して口にしようとしない浅田選手。おそらく、かなり厳しいコンディションを抱えているのだろうなと察せられる言葉だった。
浅田のキャリアで、今まで見たことのないジャンプミス。
フリーではその恐れが、現実のものとなってしまった。
2アクセルから演技を開始した浅田。次に予定していたフリップ、そして続いたルッツがどちらも2回転に。
何か異常事態が起きているのは明らかだった。
たとえジャンプが不調な時でも、体の軸をここまで締めることのできない浅田を、これまで見た記憶がない。
サルコウ、2度目のフリップも2回転になり、最後のループはそれでも3回を回り切ったが、着氷の姿勢が少々崩れた。見ていて痛々しい気持ちになるほどの不調だったが、最後のスピンコンビネーション2種類、そしてステップシークエンスではレベル4を獲得。それでもジャンプの不調は補いようもなく、フリー10位、総合9位という厳しい結果が出た。